投句〆切 12/11 (金)
選句〆切 12/21 (土)
(5点句以上)
9点句
榾といふ榾の炎のつながれる(岸本尚毅)
【評】 よく判ることをよく判る表現で云っているだけなのに面白い… という姿の句には常常ついつい惹かれます。この句に於ては「榾といふ榾」に積極的な旨みと申しますか滑稽に近いような妙味が醸されていましょう。これからますます火勢が強まるぞっという嬉しさもあります。 ──平野山斗士
【評】 榾を詠むのは難しいが、なんといっても炎を詠み、そのつながりに着目した点が佳かった。 ──依光正樹
【評】 「つながれる」の「れる」によって炎に命が吹き込まれた。 ──依光陽子
8点句
この辺が虚子のその辺かも寒し(渕上信子)
【評】 虚子は近代俳句の巨匠であり怪物。俳句の指導者、経営者を兼ねていて、それが二面性や矛盾を生みました。「この辺」が「その辺」かもしれません。季語の「寒し」が効いています。 ──水岩瞳
7点句
消灯後いきなり枯野現れる(松下カロ)
6点句
冬の日を物理学者は起きて来ず(筑紫磐井)
【評】 有馬朗人先生の追悼句と思いました。お悔やみ申し上げます。 ──北川美美
5点句
スケータードレスに肌色の部分(渕上信子)
【評】 何度も見て何度も同じ感じを持ったが、ここまで言い切った句は無かったように思う。中年おじさん(おばさん?)のねっとりとしたいやらしい視線が少女の肌にまとわりつくようだ。怪作! ──筑紫磐井
【評】 脚も含めて背中や胸元を覆うフェイク肌。この美しさと過酷の虚実皮膜。 ──望月士郎
冬館ソナチネのまた同じ箇所(内村恭子)
【評】 冬館からピアノの曲が流れてくる。ピアノ教本の「ソナチネ」の中の一曲、その曲がいつも同じ個所で間違えるているのだろう。同じ個所、としかないが、そんなことを思わせる。作者は恐らく建物の外からその個所をいつも確かめているのだ。 ──なつはづき
綿虫のふつと空気になりにけり(仙田洋子)
【評】 綿虫のふっと舞い上がる瞬間を、空気になったと捕らえた、感覚の冴え。 ──山本敏倖
風呂吹の湯気の向こうの都市封鎖(中村猛虎)
温め酒白磁の底に鳥のゐて(内村恭子)
【評】 白磁の杯なのであろう。釉薬の加減なのか底の模様が鳥に見えた。酒に酔って自分も鳥になれれば幸せだ。 ──篠崎央子
芒より老けて粟立草枯るる(前北かおる)
【評】 アワダチソウが芒と隣り合って枯れていた。アワダチソウの方が華やかさも逞しさもあるが、枯れてしまった今ではアワダチソウのほうが老けてみえたという。かつて荒地を埋め尽くすような勢力を誇っていたアワダチソウが今や衰えを見せていることなども想起された。表記は「泡立草」の方が一般的か。 ──青木百舌鳥
【評】 草本系植物学上、芒と粟立草のどちらが老けやすいか、草木類が老けることの具体的特徴とは何か、老ければ枯れるのか、老けても枯れないことだってあるだろう、そもそも異なる相の老化現象を比較することにどういう意味があるのか、比較による成果に人はにどういう価値を見出すのか、見出すべきなのか、などと熟考一週間。結論出ず。 ──真矢ひろみ
狐火に呼び止められてしまひけり(田中葉月)
【評】 そんなことってあり?と思いつつも、怖い。 ──仙田洋子
(選評若干)
十二月八日来し方を問ふ机 2点 水岩瞳
【評】 今年も迎えた開戦日。自分の来し方を考える日でもある。 ──松代忠博
川底を流るる影の紅葉かな 3点 妹尾健太郎
【評】 せせらぎは無くゆったりと運ばれて行く。影の主を探し当てたか、それとも枝に残る紅葉を見上げたか。 ──千寿関屋
木枯らしの果てのかたちは河馬に似て 4点 真矢ひろみ
【評】 木枯らしの行き着く先の吹きだまりは確かにそんなものなのかもしれない ──中村猛虎
十二月七日、九日みみぶくろ 3点 望月士郎
【評】 十二月八日が抜けている。真珠湾攻撃の日であり、ジョン・レノンの命日である。その日に何か思うこと、それを俳句にすることは多い。しかし、消失させるのはどうだろうか。当日の八日よりもその前後がとくに寒い。何か、聞こえますか。 ──中山奈々
日に翳し古地図の色の朴落葉 2点 渡部有紀子
【評】 ぱりっと乾いた音で破れてしまいそうなところも確かにそうですね。 ──小沢麻結
綿虫の綿を撫づれば頭を逸らし 2点 小沢麻結
【評】 浮遊している綿虫を捕まえたのではなく、何かの拍子に掌へ落ちてきたのだろう。その可愛い綿を思わず指先で撫でてしまう。小さな魂が大きく反応する様を描いており楽しい作品。 ──妹尾健太郎
【俳句新空間参加の皆様への告知】
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【ピックアップ】
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前北かおるです。
返信削除いつも楽しく参加させていただいております。
うっかりして選句が間に合わなかったので、ここに貼らせていただきます。
菊膾謀反の汚名濯がれず
榾といふ榾の炎のつながれる
日に翳し古地図の色の朴落葉
門松立つ歯科と墓石と隣り合ひ
うつとりと見る横浜や年忘れ
→中華街あたりで忘年会をして、山下公園に出てきた感じでしょうか。普段はわざわざ足を向けない、いかにも横浜らしい景に、あらためて心を奪われたのだと思いました。「うつとり」でも「年忘れ」なので嫌みがなくて共感できました。