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2020年8月7日金曜日

【新連載・俳句の新展開】第3回皐月句会(7月)[速報]


投句〆切  7/13 (月)
選句〆切  7/27 (月)


(5点句以上)
12点句
夜濯ぎの最後は石がこぼれけり(松下カロ)

【評】  洗い出され、最後にこぼれた出た「石」という違和。実にさりげなく、リアルで、実に象徴的だ。 ──依光陽子
【評】 なつかしい季題と、石がこぼれた時代的描写が芳しい。 ──依光正樹
【評】 砂ではなく、石。どこにいたんだ。 ──中山奈々

9点句
手の平をはるかと思う昼寝覚(山本敏倖)

【評】 夢のなか ──千寿関屋
【評】 昼寝をして目覚めたときの異空間にいるような不思議な感覚を、「手の平をはるかと思う」と捉えたところが新鮮で良かったと思います。 ──水岩瞳
【評】 少し痺れたような、部屋中の空気を掴んでいるような不思議さ。 ──中山奈々

7点句
夕暮れと夜のあいだに茄子の紺(松下カロ)

【評】 夏の夕空のグラデーションの美しさを端的に示している茄子の紺、それがきっぱりと句末を引き締めている。 ──妹尾健太郎
【評】 この茄子は多分、栽培され生っている状態。「夕暮れと夜のあいだ」という暮れ切らない時間帯に「茄子の紺」が見えている。茄子の紺が恐々としている。 ──北川美美

5点句
白南風や両の翼のごと岬(仲寒蟬)

【評】 視界の左にも右にも岬が見える。地上でも海上でも差し支えないと思いますがそういう場に作者は、立っていて、風を受け晴れやかです。大景を開放的に描いてあり季語の選び方置き方もたいへんシンプル。爽快、の一言に尽きましょう。余計なことですがこのたびの出句群には血の気の多いものが目立ったような…そのせいか本句の爽快も、より際立ったらしく思えます。 ──平野山斗士

賑やかに少女加はり箱眼鏡(松代忠博)

【評】 箱眼鏡はお尻ががら空き。だからという訳でもあるまいが覗いているのは男の子が多いように思う。でもこの句では少女たちが「見せて見せて!」と覗き込んでいて如何にも賑やか。その景が眼前に見えてくるようだ。 ──仲寒蟬

素麺の束をほどけば広き海(篠崎央子)

【評】 瀬戸内を望む小豆島?いや…、これは海なし県、奈良の三輪素麺に違いない!絶対 ──夏木久
【評】 あの紐を解くの、難しい。 ──中山奈々

この道はただ夏蝶を追ふために(飯田冬眞)


(選評若干)
にごりえの男女生涯裸なり 2点 北川美美

【評】 「にごりえ」は、濁り江ではなく、樋口一葉の『にごりえ』であろう。アダムとイブのように男女のことは、死ぬまで裸の関係なのだ。一方で、幼い頃、村の濁り江で裸になって遊んだ幼なじみと結婚して、死ぬまで裸の関係を続けるというストーリーも考えられる。「生涯」と言われると大袈裟な気もするが、そんな関係が理想だ。 ──篠崎央子

遠い死とだぶらせて置く籐椅子を 2点 妹尾健太郎

【評】 籐椅子の仮眠と死の永眠は遠くて、近い ──小林かんな
【評】 亡き祖父・伯母がよく座っていた籐椅子は、今も我が家にある。極めて私的な感傷だが、私のために詠んでもらったような気がした。 ──仙田洋子

おほかみを真神と祀る夏炉かな 1点 岸本尚毅
【評】 夏でも肌寒さを感じることがあるような、北国の山深いところなのだろうか?かつてこの山に狼が生息し、神と崇められた。絶滅してしまった今でも信仰の対象であり人々の生活に根付いている。風土性と格調を感じる一句。 ──渡部有紀子

青白く蚯蚓膨るる雨の山 3点 平野山斗士

【評】 雨の山道で、青白く蚯蚓が膨らんでいく様子を目撃したのだろう。青白くの感覚的な色彩の把握と、膨らむという詩的現象の造型に魅かれた。 ──山本敏倖
【評】 元気な蚯蚓は、かえって少し血色悪そうな色をしている気がします。それを「青白く」「膨るる」と言っていると解しました。「雨の山」の緑の中ならではの美を発見した句だと思いました。 ──前北かおる

墓石に映りて猫や朴の花 3点 西村麒麟

【評】 偶然のように集まった語彙が三つ。「墓石」「猫」「朴の花」。石の表面に、ナニかと思えば「猫」が「墓石」に映っている。墓の中から出てきた霊のように浮かび上がってきている。文脈では、「や」で切れているから、「猫が映っている墓石」、ちょっと不気味な墓地には、しかも朴の木があり大輪の白い花が咲いているのだ。この取り合わせの微妙な引き会いがいい。朴の花が暗い高枝の陰に見えているそれが、そのまま墓石に引きずり込まれて映っている、すると、この墓石に猫が映る風景が、此の世ならぬ世界のように思えてくる。そこがとても面白かった。 ──堀本吟
【評】 つやつやの墓石。新しいのかもしれない。墓石に映る猫の質感は冷たい。朴の花の鮮やかなのにどこか作られた質感のようだ。 ──中山奈々

蟾蜍奇数の組は登校す 3点 小林かんな

【評】 コロナの感染拡大は、様々なところに影響しています。可哀そうな登校です。早く元に戻したいですね。 ──松代忠博

七夕のクラウドに文字と数列と 2点 小林かんな

【評】 クラウドにあるデータは0と1の数列。それが文字、画像、音楽、そして映像となる魔法。まるで七夕の空に光る星々のようだ。 ──中村猛虎

セックスレス始めましたと水中花 3点 中村猛虎

【評】 特選。時宜にかなったプラン、大当りすること請合いです。 ──渕上信子

下闇の人は耳から気がふれる 3点 真矢ひろみ
【評】 ゴッホの絵を詠んだ句が今回投句されていたので、これもゴッホを想起しているのだろうか?それとも身近な人が幻聴に悩まされているのだろうか?
顔に蔭が出来て目鼻はよく見えない中で、耳だけが白く鮮明に浮かび上がってくる。 ──渡部有紀子

蘭鋳と君とふとつちょくらべかな 4点 仙田洋子
【評】 ふとっちょが、蘭鋳と作者、君と作者の距離の近さを感じさせる。明らかに作者は太目好きであり、やせぎすは嫌いなのである。また派手好きでもあり、地味は苦手なようだ。これは人生観そのものである。 ──筑紫磐井
【評】 「くすっ」とくる。「ふとっちょくらべ」に小学生時代の肥満児の友人を思い出した。「蘭鋳」という仰々しい言葉との対比が効いている。 ──真矢ひろみ

パントマイムくの字に曲がる蟻の列 3点 田中葉月
【評】 パントマイムを見ていると本当にそこに壁があるような錯覚に陥ることがある。見ているうちにその世界に引き込まれてしまうのだ。蟻の列が、不意にくの字に曲がったのを見て、パントマイムの壁を感じた作者の感性に脱帽。 ──飯田冬眞

教室のみんなに会へず星祭 1点 前北かおる

【評】 会いたいと書かれた短冊が揺れていそうです。早く会える日がきますように ──小沢麻結

涼しさや手狭暮しに花ひとつ 3点 依光正樹

【評】 意識的ではなく、自然に感じる涼しさを詠むことが多いけれど、いかに涼しくするか。それは夏の生活の課題なのである。涼しさを作っていることがはっきり詠まれていて、共感した。 ──中山奈々

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