福田甲子雄(1927〈昭和2〉8.25~2005〈平17.4.25〉の自信作5句は以下通り。
凍てはげし緯度もて国をわかちあひ 「俳句」平成元年3月
一山の新樹のうねる目覚めかな 「雲母」 〃 7月
金堂のひかりは歯朶の若葉にも 「雲母」平成元年9月
死は瞼とぢらぬこと梅雨半ば 「雲母」平成元年9月
たちまちに落花のたまる水の上 「〃 」 〃2年6月
一句鑑賞者は永島転石。その一文には「(前略)現実に『壁』は崩れた。『勢い』が壊したのだ。『あっ』という間に崩れた。『勢い』は一人では作れない。沢山の人々によって生じる。その『勢い』が違う方向に走り出した結果が『壁』であり、又、『勢い』が壊したのも『壁』であった。掲句の国たちは、もうひとつになったのだろうか。もし、ひとつになっていたなら、折角のチャンスをつまらない『利害』や『力』で分かつ(…傍点あり)ことのないようにしなくてはいけない。それにはボクの思いが必要であり、キミの考えを借りなければならないだろう。バカと言われても楽観主義とあざけられても、僕は、やっぱりジョンの歌をうたうだろう。
もしかしたら、作者の意図する『国』は甲斐や出雲、あるいは朝鮮半島のそれであったかもしれない。しかし、それらの場合も『キマリ』でしかない。時代は、きっと、もっと不確実な方向へ向かっているのだ」とある。
確かにこの句の書かれた直前、1989年11月には、1961年東西ベルリン境界上に43キロメートルにわたって築かれた壁は崩壊し、開放された。
永島転石の俳号・転石は、イギリスのロックグループ、ローリング・ストーンズからのものだ。また、「やっぱりジョンの歌をうたうだろう」は、ビートルズのジョン・レノンの「イマジン」や「ユートピア宣言」によっている。
ともあれ、福田甲子雄に以下の高名な句がある。そして、ようやく、甲子雄につながる俳誌として「今」が発行されるようになったのは、甲子雄復活をも思わせる。
稲刈つて鳥入れかはる甲斐の空 甲子雄
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