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2025年6月27日金曜日

英国Haiku便り[in Japan](54)  小野裕三

芋づる式に世界へ広がるhaiku生活

 二〇二〇年に英国から帰国して以来、実は一度も日本を出ていない。だが、一歩も日本を出ないこの四年ほどの間に、僕のhaiku生活は驚くほど国際化した。英語とhaikuとインターネット。この三つさえあればどこまでも生活は国際化しうると知った。

 ひとつの大きなきっかけは比較的最近の出来事で、英語haikuの選者を始めたことだ。縁があって、昨年末から日本英語交流連盟のウェブサイトにある毎月の英語haiku投句欄の選者を務めることになった。本当に文字通り世界中の人から投句があることに驚くのだが、もたらされた変化はそれだけではない。おそらくこれのせいだと思うのだが、Facebookを通じて世界中の人から友達申請やメッセージが頻繁に届くようになった。

 二月のある週末には、四人の見知らぬ外国人からメッセージが来た。一人めはイタリア人で、これはあいさつのみ。二人めはニュージーランド人で、子ども等も対象とした俳句コンテストを主催しているらしい。サイトを紹介されたので、それはそれで微笑ましく思いながら見て好意的な返信をした。三人めはウズベキスタン人で、芭蕉や蕪村や一茶や子規の俳句を自分がウズベク語に訳した、といったことを説明してくれる。ウズベキスタンと言われてもどんな土地なのかあまり想像も湧かないのだが、そんな国にさえhaikuが翻訳されて伝わっているのは驚きでもあり嬉しくもある。

 そしてその週にメッセージをくれた四人めの人は、英国のウェールズに住む女性。「私、テレビのドキュメンタリー番組を作る会社で働いているんだけど、今度、日本の文化をテーマにした番組を作る予定なの。あなたはhaikuの世界でいろいろ実績があるみたいだから、ウェールズの詩と俳句の違い、みたいなテーマをあなたに話してもらってもいいかしら?」みたいなことが書いてある。

 面白そうなので、さっそくFacebookのビデオ機能を使って数日後に会話してみた。haikuは自然にも文化にも繋がっていて面白いわよね、といったことを画面の向こうから言われ、しばしhaikuの話をした後にこう言われる。「来月、私たち取材で日本に行くのよ。東京と姫路と福岡。あなた、東京までは近いの? 東京で会って話せる?」もちろんイエスと答える。最終的に僕がそのドキュメンタリー番組に登場するのかは不明だが、ウェールズの人と直接会ってhaikuの話ができるなんて、興味津々の機会だ。

 かくして僕の先入観など遥かに超えるペースと変化で、芋づる式に僕のhaiku生活は海外へと広がってきた。果たしてこれからさらにどんなめくるめく展開を見せてくれるのか、もはや予測すらもつかないのが、ワクワクもドキドキもする。

  ※写真は2019年にWalesにて撮影

(『海原』2024年5月号より転載)