【俳句新空間参加の皆様への告知】

【ピックアップ】

2024年5月31日金曜日

■ 第46回皐月句会(2月)[速報]

投句〆切2/11 (日) 

選句〆切2/21 (水) 


(5点句以上)

8点句

風花や名画座を出てすぐ埠頭(妹尾健太郎)

【評】 やや昭和っぽさが目立ちますが、私も昭和人ですので、いただきました。──仙田洋子

【評】 名画座で観たのは ジャンギャバン「望郷」か「霧の波止場」に違いない──真矢ひろみ

【評】 斎藤真一の絵で海沿いだか川沿いの映画館を見た、あんな感じかな。──仲寒蟬


7点句

寒林の指と指との遠さかな(松下カロ)

【評】 眼前の光景の遠近を指で測りつつ見ている気もするのだが、その遠さ(距離)の方につよい思い入れを感じる作品。傍に居る人や、途方もなく遠い国に居る人々の指との隔たり、背景はあくまでも寒林。──妹尾健太郎

【評】 つながらない心と心の遠さ。──仙田洋子

【評】 寒林の裸木が指に?読んで自分の手で「むすんでひらいて…」していた!そしたら親指と小指の遠いこと!180°逆…切なく遠い!本当に・・・―今回、4句選にして2句選評しました、申し訳ない―──夏木久


能面の裏もおそろし雪催(仙田洋子)

【評】 おそらく鬼神の面、怨霊の面、女面のどれかだろう。表と同じ裏の表情の凹凸が、今にも雪が降り出しそうな雪催の季語により、鮮やかな触感が伝播される。──山本敏倖


6点句

掬ふ掌の諸子は遠き目をしたり(真矢ひろみ)

【評】 絶滅危惧であるとか何とか、人間の側からの意味を勝手に読み取ってしまうのはおそらく失当なのでしょう。小さな命を愛でている(そして喰っちまう)、その気心がこの句の魅力と思われます。──平野山斗士


5点句

敷布団にんげん毛布掛蒲団(望月士郎)

【評】 毛布は人間の下に敷いたほうが暖かいという意見もあるそうですよ…。戯画化というより図解っぽい。生あるものだけが仮名書きなんでしょうか。──佐藤りえ


(選評若干)

とつおいつ父の黙なる春の闇 1点 松代忠博

【評】 無口な父親が思い悩んで結果無口というのを「とおといつ」で上手く表現されている。春の闇が一見動くようにも「黙」と付くようにも思えるが、春に家族の変化から何かしらの決定権を与えられた父親像と読み解けば更に双方が響き合う──辻村麻乃


節分の鬼にも好かれたきこころ 3点 水岩瞳

【評】 一読、浜田廣介の「泣いた赤鬼」が、仲良くなって優しいと思われても、節分には鬼の役を…?日頃は優しいお父さんんも顔が遠藤憲一に似、素顔で鬼に!平仮名の「こころ」が…中にある色々な、複雑なところが、春に向けて色変えてゆく雰囲気!──夏木久

【評】 大丈夫、他のどんな鬼より節分の鬼は好かれてるヒーロー──千寿関屋


折紙の角の合ひたる睦月かな 2点 渡部有紀子

【評】 睦月だからおめでたい鶴や亀を折って、正月だから折り目正しく生活する気持ちが伝わります。──千寿関屋


死の土を堆く盛り囀れる 4点 依光陽子

【評】 大地には死が、その上では生を謳歌する鳥たちの暮しが。ウクライナの春か。──仲寒蟬


見るともなく人の白髪を見る二月 2点 松下カロ

【評】 逃げる二月、目についた他人の白髪に己の生先を思い浮かべてしまう、先のことを考えても仕方のないことは重々承知しているが時の流れは速いもの。さて、これからどうなる?どうにもならないか。──千寿関屋


マタイ受難曲底冷のホールより 3点 内村恭子

【評】 ちょっと付き過ぎとも思ったがバッハが、マタイが、好きなので。──仲寒蟬


春雷や武者震ひするトラクター 4点 仲寒蟬

【評】 春雷が農作業のなにかのきっかけになるのか、トラクターの主も作業着を揃え道具の手入れを始めたようで──千寿関屋


紙飛行機炊き出し鍋に着陸す 4点 中村猛虎

【評】 能登の人たち、大変な毎日を送っているが、報道を見てると子供たちの無邪気が大人たちの気力を取り戻すきっかけになっているようで、炊き出しのおばちゃんの「そっちでやりな」とか「お椀持ってきな」とか聴こえてくる。──千寿関屋


ドニエプロペトロフスクの長き冬 3点 内村恭子

【評】 ドニエプロペトロフスクはウクライナのドニプロのロシア語名に基づいた表記。これを書いている数日前、ロシア軍の攻撃でドニプロの発電所が被害を受け、一部で水の供給が断たれたとのニュースがあった。2020年から始まったロシアによる侵攻による被害は想像を絶する。まさに長き冬。この表記の一文字一文字を口にしながら今この地に起きていることを忘れてはならないと強く思う。どうか一日も早くウクライナに本当の春が来てほしいと祈らずにはいられない。──依光陽子

【評】 最近のニュースでは「ドニプロ」の名でよく出てくる。地名の喚起するイメージがこの句のいのち。──仲寒蟬


吾に反骨されど蛙の目借時 4点 水岩瞳

【評】 私も反骨を自任しているのでよく分かる。自嘲か、韜晦か。──仲寒蟬


春を待つ我と達磨と招き猫 2点 岸本尚毅

【評】 良いことが待っていそうな春、と思える組み合わせに惹かれます。誰もに良いことが、まず春が訪れますように──小沢麻結


テロリスト一人は消えて手毬唄 3点 近江文代

【評】 我々の活動の時間範囲は通常1~2か月であろう。怒ったり泣いたり、喜んだりの感情もこの時間尺の中で起こることだ。1年以上たつと記憶ですらあやふやになってくる。事実だけではなくて、自分がどんな感情を持っていたかもあやふやになる。まして50年近く前になればそれは歴史であって、私の感情は埋もれてしまうことになる。生々しさは消えて、どす黒い記憶だか残ることになるのだろう。

テロリストが死んだと聞いても、今まで隠されていた扉が開かれたようなもので、とんでもない風が吹き出してくる、当惑が生まれる。最近こんな事件が多いようだ。──筑紫磐井