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2023年12月8日金曜日

SNS発:俳句のアドベントカレンダー  佐藤りえ

  SNS「X(旧:Twitter)」上で「俳句のアドベントカレンダー」企画が進行中である。

企画といっても、何らかの団体、グループが運営したり、募集をしているわけではない。「X」をプラットフォームとして、そこにアカウントを持つもの同士が共通のハッシュタグ #俳句アドベントカレンダー を共有して書き込みをする、自主的なイベントである。

アドベントカレンダーとは、本来は待降節の期間、一日ひとつずつ窓を開けていくカレンダーのことを指す。窓の中には写真、イラスト、詩の一節などが印字されている。紙に印刷された窓を切り開くタイプのものから、近年では引き出し型、ツリー型などさまざまな形態のものがあり、中にお菓子やおもちゃを入れて取り出す、娯楽として用いられることも多い。


インターネット上でのアドベントカレンダー企画は2010年代ごろより各種行われているようだが、「俳句」と銘打ったものが登場したのは近年のことのようだ。

調べた範囲で最も古いものは2017年、プロジェクト管理ツール「Backlog」内のアドベントカレンダー企画で「Backlogあるある俳句」が株式会社テンタス・小泉智洋によって発表された。


 プロジェクト名前が似てきてよくわからん/小泉智洋

 重複課題お互いリンクだどっち元?

など、どちらかといえば川柳的なあるあるネタが披露された。

2018年にはウェブサイト「note」のアドベントカレンダー企画内で内橋可奈子による「クリスマスについてスケッチを」が書かれた。これはクリスマスについての日常エッセイに俳句が織り込まれたものである。


 おはなしのひとになりたいクリスマス/内橋可奈子

 クリスマス剥がせよ膜のようなもの

などの作品が見える。


上記2点は企画内の一角に俳句が含まれているものだが、現在「X」上で行われている 俳句アドベントカレンダー は一人が12月1日から25日まで、1日1句を投稿し続ける「ひとりアドベントカレンダー」興行である。

こちらは2020年12月2日の箱森裕美のこのつぶやきに端を発している。



 ひとつひとつ磨いて起こす聖樹の実/箱森裕美

西川火尖、柊月子らが参加、2020年のカレンダーは数人規模でおひらきとなった。



翌年2021年は写真、イラストなどを添える者も現れ、参加者は増加。年号つきの #俳句のアドベントカレンダー2021 ハッシュタグも登場した。岡村知昭・松本てふこ・ばんかおりらも参加、1日から25日まで「完走」したものは1枚画像にまとめて公開する流れもできてきた。



かくいう筆者も2022年に参戦、毎日イラストレーションを添えて投稿、折句で頭文字を並べると短歌になる、ということをやりました。



「X」は無料登録ユーザーはひとつの書き込みに対して140文字の字数制限がある。ひとつの記事・コメントが短いことからか、アドベントカレンダーに限らず俳句・短歌をつぶやく者がもともと数多く存在する。

アドベントカレンダー企画はそうしたプラットフォームの性格を活用、時節に沿ったお祭り感のある催しとなっている。

「降誕節」「クリスマス」は冬の季語ゆえ、それを詠み込めば即冬の句となる、という目に見えてはっきりした題詠ともいえる。もっともアドベント内は冬の事物を詠み込んだ句が多い。クリスマスしばりで作句をするものではなく、毎日コツコツ詠み続けることがこの催しの真骨頂といえるだろう。

SNSはかつての掲示板や2ちゃん(現:5ch)に比べ「場を共有している」実感が掴みにくい場でもある。ハッシュタグを共有することで連帯を示す、参加意志を表明することはできるが、どのぐらいの人が同時に参加しているか、自分の書いたものをどのぐらいの人が見ているか、といった全体像を把握するのが困難な仕組みになっている。そういう意味からすると、これらの投句は刹那的な取り組みにも見える。
季節行事とは、しかし、そもそもそういうものかもしれない。時間的制約が最優先の枠組みとしてあり、それを過ぎたら、行きて帰らぬ、さてその空には銀色に、蜘蛛の巣が光り輝いてゐた。というように、さっと流れていくのが美点ともいえよう。


今年もすでに #俳句のアドベントカレンダー2023 が始まっている。

表記に若干ゆれがあり、「#俳句のアドベントカレンダー」「#俳句のアドベントカレンダー2023」「#俳句アドベントカレンダー」などハッシュタグ検索でたどれば、参加者の書き込みがずらりと表示される。

クリスマス当日に向けて昂ぶるものもいれば、淡々と日常的な冬の情景を詠む者もいる。

多様な冬の句作風景を目の当たりにしてみてはいかがだろうか。

(文中敬称略)