【俳句新空間参加の皆様への告知】

【ピックアップ】

2023年1月20日金曜日

第31回皐月句会(11月)

投句〆切11/15 (火) 0:00

選句〆切11/25 (金) 0:00


(5点句以上)

8点句

文化の日隣の庭も少し掃き(渕上信子)

【評】 「少し」が惜しいところか。──依光正樹


6点句

冬の蠅砥石に翅を光らせて(岸本尚毅)

【評】 炊事場に蝿が入ってくるのは迷惑であるが、一瞬止まった砥石にいる冬の蝿を思わず観察してしまった作者がいる。その翅の光からこれも我と同じ生き物なのだとわかる。──辻村麻乃


親指が剝いてゆきたる蜜柑かな(依光陽子)

【評】 親指「が」、で面白くなった句。──仙田洋子

【評】 只事と言わば言え、蜜柑の皮をむくのは間違いなく親指の役目。──仲寒蟬

【評】 剝いてくれた、わけではないと解します、そして自分の指にも非ず。他人の行動を眺めての事でしょう。剝きながら用事を思い出しでもしたか。中途半端に置き去りにされた蜜柑を思い描きます。──平野山斗士


5点句

木の実降る耳をはみ出す耳飾り(小林かんな)


U字溝使うてドヤ街の焚火(内村恭子)

【評】 こういう光景は見たことないが、言われると如何にもありそうで臨場感があふれている。──仲寒蟬


柴犬が来るのがわかる枯葉道(佐藤りえ)

【評】 柴と犬種を特定したところがミソ 笑──真矢ひろみ


あやまちのやう人参の置かれけり(田中葉月)

【評】 例えば大根がずらりと並んだ縁側に1本置かれた人参。これは何かの間違いなのか、天の配剤なのか。──仲寒蟬

【評】 「人参」は、あやまちで間違ってここに置かれた、と書かれているがこう書かれてしまったからには、何が何でもこの位置は正しい。──堀本吟


ドローンを叩き落として神の旅(仲寒蟬)

【評】 ドローン何するものぞ、と神。現代的な素材をうまく取り入れましたね。──仙田洋子

【評】 「叩き落として」とは穏やかではありませんが、其処は人間の作った人工物の領域ではなかったのでしょうか。空を飛ぶにもルールがあるようです。──小沢麻結

【評】 釈迦掌上ならば小うるさく追い払われてしまうかもしれませんね。──佐藤りえ


鯛焼にむつと唇ありにけり(西村麒麟)

【評】 「むつと」がいいですね。──仙田洋子

【評】 よく見ればその通りである。本物と見まごう「鯛」焼きのなまなましさ。これをみつけはじめて言った者の勝ちである。──堀本吟


立冬の妻の逆立ち受けそこね(飯田冬眞)

【評】 この後この夫婦はどうなったのだろうか、恐ろしくて知りたくもないが。正に立冬、冬の始まり。──仲寒蟬


選評若干)

ソシラドと続く調べや紅葉散る 2点 松代忠博

【評】 何処からか、おそらくピアノだろう、ドレミファの音が響いて来る。ドレミファはイメージさせながら、ソシラドへ続く、そんな一空間の、一光景の、一瞬間に紅葉が散る。──山本敏倖


葬列しぐれて逆走の老ひとり 3点 真矢ひろみ

【評】 逆走と言われるとつい高速道での車の逆走を思うが、これは葬列の向きと反対方向へ進む老人だろう。でもなぜ??──仲寒蟬


手で顔を覆ふ焚火の男かな 2点 岸本尚毅

【評】 何も言っていないのだけれど、この男、あはれ。──仙田洋子


月射してパントマイムの溶け始む 3点 中村猛虎

【評】 〈溶け始む〉と捉えたところに惹かれました。月に溶かされたかのようです。──篠崎央子


師を偲び物理に遠く林檎食む 3点 内村恭子

【評】 有馬先生のお弟子さんを連想しました。物理学の研究はやめて久しいけれど俳句は続けている・・──渕上信子


をかしくてたまらぬ猫と冬ごもり 1点 筑紫磐井

【評】 「をかしくてたまらぬ猫」とはどんな猫だろう。あれこれ想像しつつ、そんな猫と一緒だったら楽しい冬ごもりなんだろうなあ。──依光陽子


返り花誰にも見えぬボクがいる 3点 山本敏倖

【評】 孤独の極みの透明人間願望。──仙田洋子


白ひげは広重ですか秋の空 3点 妹尾健太郎

【評】 アハハ!──渕上信子

【評】 秋空になびくすじ雲の細いうごきなどを眺めて、こんな風に東海道を旅した絵師の姿に想像を広げ・・思わず二度読みをしてしまうトクな作品である。──堀本吟