【俳句新空間参加の皆様への告知】

【ピックアップ】

2022年11月25日金曜日

第30回皐月句会(10月)[速報]

投句〆切10/11 (火) 

選句〆切10/21 (金) 


(5点句以上)

11点句

霧の駅ひとりのみんな降りて霧(望月士郎)

【評】怖ろしいことがすんなり書かれている気配。円環構造エンドレスのこの句世界に注がれる視線はどこからのものだろう。列車はもう行ってしまったのか?次の世の霧の駅めざして。──妹尾健太郎

【評】 みんないるんだけど、それぞれがひとり。孤独を霧がつつむ。──仙田洋子

【評】 降りた乗客はみな連れのないひとり客だった…ということでしょうか。霧の中に消えていってしまったような、不思議な句です。──佐藤りえ

【評】 季重なりが面白い。──依光正樹


10点句

東映のやうな波来る野分かな(内村恭子)

【評】 あの映画の始まる前の映像が思い浮かぶ。──仲寒蟬


7点句

月のやや欠け蛸焼きを裏返す(篠崎央子)

【評】 やや欠けているのは月であろうが、たこ焼きも少し歪だったのかも知れない。「やや欠け」が前後のコトバそれぞれに係る読み心地が面白い。──辻村麻乃


蘂といふ字をそのままに曼珠沙華(仲寒蟬)

【評】 写生の深度を、文字から曼珠沙華まで精確に突き詰め、さりげなく凝視、観察。作者の鋭利な感性を具象化している。──山本敏倖


5点句

書庫の灯をたぐりたぐりて秋の蜘蛛(渡部有紀子)

【評】 〈燈火親し〉の季語を変奏してみせた、といった処にて、古びた部屋の埃が読者にまで届いて来そうな趣があります。──平野山斗士


山ぶどう酸つぱし地図のたたみ皺 (飯田冬眞)


そらいろの空箱かさねゆく秋思(望月士郎)

【評】 やや甘いかもしれないが、青春の憂愁を感じる。人間というものは、子ども時代を追い出されると、常にどこかで愁いを感じる存在。──仙田洋子

【評】 空箱と感じが重なるので敢えて空色を「そらいろ」とした芸の細かさ。──仲寒蟬

【評】 言葉の方向は空から心へ、視線は心から空へ。視界も心象も「そらいろ」で、このネガティブでない「秋思」は絵本のようで好きな世界。──依光陽子


(選評若干)

団欒や秋刀魚くひぞめくひじまひ 4点 千寿関屋

【評】 「くひぞめ」「くひじまひ」という畳み掛けが面白い。秋刀魚はもうかつてのような庶民の食べ物ではなく高級魚になりつつあるから。──仲寒蟬


私を断崖と呼べ 野分と呼べ 3点 筑紫磐井

【評】 強靱な言葉。作者がわかるのが楽しみ。私の中では特選扱い。──仙田洋子

【評】 その自意識過剰に思わず笑った。──渕上信子


団欒といふ嘘されど秋ともし 4点 真矢ひろみ

【評】 「されど」ですね。──仙田洋子

【評】 小津安二郎の映画というのは夫婦と娘、父と娘の団欒を描いているようだが、善意又は無意識のウソがそこかしこに見えている。意識して目を凝らさないと見えてこないが、これが小津映画の見方のように思える。

「晩春」「麦秋」という季語が配されるのもいい。──筑紫磐井

【評】 「嘘」という決め付けにドキッとする。春燈なら団欒、でも嘘なので秋灯し。──仲寒蟬


スマッシュの大きくアウト秋の暮 1点 仙田洋子

【評】 実は、散歩の途中でそんなテニスボールを1個、失敬してしまいました。──渕上信子


大八車ごと声遠ざかる螽斯 2点 妹尾健太郎

【評】 大八車に草や藁が乗せられていてその中に螽斯が紛れ込んでいるのね。──仲寒蟬


ラブドールの中に骨あり曼珠沙華 1点 中村猛虎

【評】 近年ではかなり精巧に作られているラブドール。シリコンに覆われた柔らかい肌の奥には骨まで再現されているのだろう。使い古したラブドールが痩せてしまい、萎んだ曼珠沙華のようになったのか。──篠崎央子


想ひ出は嘘かもしれず秋の雲 3点 渕上信子

【評】 上五中七から不意打ちを食らったような感覚を得ます。下五の季題でそうかもしれないと納得させられました。──小沢麻結


のうみそにすだちをかけてつまみにす 3点 山本敏倖

【評】 今回投句を忘れてしまってご免なさい。これは、人間の感情や思考って、自分で自分を食べるわざおぎ、だと見做すとなんだか怖い句ですね。──堀本吟


0 件のコメント:

コメントを投稿