【俳句新空間参加の皆様への告知】

【ピックアップ】

2022年8月12日金曜日

■ 第26回皐月句会(6月)[速報]

投句〆切6/11 (土) 

選句〆切6/21 (火) 


(5点句以上)

10点句

夏帽子転がる方に海がある(中村猛虎)

【評】 陸風だったのですね。青春性を感じます。──仙田洋子

【評】 何でもない景ですが、「転がる方に海がある」という捉え方をしてみると、意志を持って帽子が波打ち際へ転がっていったように思われます。そこに詩情を感じました。──前北かおる


9点句

蘭鋳をビルの夜空に放ちおく(真矢ひろみ)

【評】 高層階に置かれた水槽を想いました。夜空を背にした透明な水の中に「蘭鋳」が浮かんでいます。輪郭のくっきりした蘭鋳の姿が想像され、余韻に憐れさがありました。──青木百舌鳥

【評】 ビル街の夜空に蘭鋳を放つ。実景的にはあり得ない構図だが、金子兜太の青鮫の句のように、シュールな絵画的詩的新感覚の一句として頂く。ビル、夜空、蘭鋳の三角構図がそれを支えている。──山本敏倖


海からの風にねじれて滝の水(仲寒蟬)


7点句

叱られて団地の黴を見てゐたる(近江文代)


夏蝶を閉じ込めておく自習室(松下カロ)


6点句

昼の月あおむけに蟻に運ばれて(望月士郎)

【評】 蟻の死体を蟻たちが運んでいくところ。彼方の昼月の無表情が蟻の定めを写しているようです。──小沢麻結


炎昼に平均点が落ちている(山本敏倖)


りんりんと麦茶鳴らして配りけり(青木百舌鳥)

【評】 りんりんが臨場感がある。──依光正樹


5点句

黄ばみつつある山梔子の匂いかな(小林かんな)


飛ぶもののぢぢと音立てキャンプの火(近江文代)

【評】 虫は明るいところが好きである。間違えて火の方に来てしまい燃えてしまう。その時の「ぢぢ」という擬音語が面白い。──辻村麻乃

【評】 やや既視感がありますが、「ぢぢと」の臨場感がいいと思いました。──仙田洋子


(選評若干)

ゆんゆんと日月流る草清水 2点 田中葉月

【評】 「ゆんゆんと」のオノマトペに惹かれました。日月も流れ、湧いた水も流れる。──仙田洋子


兄いつも真つ先に言ふ父の日と 4点 内村恭子

【評】 兄と父の間柄、さらに作中私=本人(妹か弟)と兄の相性、本人と父の関係や如何に などと──真矢ひろみ

【評】 きょうだいの中で、やはり兄(長子、だろう、つまり次世代の「父」)が一番、その現実的な苦労や地味な家族愛を知っている。この家には家族制度の良いところがまだこわれていない。そのことをさりげなく語っている句です。


一歩入れば楳図かずおがゐて涼し 3点 依光陽子

【評】 楳図かずおが路地だか部屋だかにいたならさぞびっくりするだろう。むかし彼の「半魚人」とか「蛇女」を読んで恐い思いをしたものだ。この場合の「涼し」とは「百物語」や「怪談」と同じ気分でやはり夏のものなのだ。ぐわし!──仲寒蟬

【評】 楳図かずおの漫画は、日本人なら、ぞくっとするかもしれないが涼しくはないだろうと思う。しかし、考えるとそもそも「涼しい」のと「ぞっく」とするの違いは何であろう。「涼し」と「怪談」は何れも夏の風物だ。掲出の句に違和感を感じるのは、ことによると日本人の微妙すぎる感覚だからではないか。だって、恐怖で鳥肌が立つのと冷気で鳥肌が立つのとはなぜ違うのか、外国人には不思議に思えるかもしれない。いや外国人は怪談(例えばゾンビやキョンシー)に(絶叫しても)ゾックとすることはないかもしれない。「涼しい」のと「ぞっく」とするの違い以上にこうした感覚は国境を越えられないのだということを考えさせてくれる。──筑紫磐井


夏空を大きく切つてフリスビー 2点 渡部有紀子

【評】 「大きく切つて」がいいですね。素直な表現で、スカッとします。──水岩瞳


リュック背負ひ立夏のルート66 2点 内村恭子

【評】 若々しい!ヒッチハイカーでしょうか。安全にだけ気をつけて!──仙田洋子


麦酒飲むヒトは賢しサルよりも  2点 渕上信子

【評】 当代切っての有名人や女優さんを起用してビール各社が競う「うまい!」「うんまい!」ぷはー顔のCMには辟易。挙げ句、サルと比べられて台無しに褒められてしまったのはヒトの方。──妹尾健太郎


十薬の花や昨夜の明晰夢 2点 青木百舌鳥

【評】 私もよく明晰夢を見ます。覚めたくて、川に飛び込んだりしても覚めなくて、そんなときは多分うなされていることでしょう。──渕上信子


十字架を弄る雨や花石榴 1点 田中葉月

【評】 人が指に弄るのがロザリオならこの場面では、雨が、屋根だか壁面だか或いは墓碑だかの十字架を〈弄る〉。この表現一つで一句に気韻が具わりました。〈雨〉と〈花石榴〉との組合せは似つかわしく据わりが宜しいですね。──平野山斗士


しやがみこむ人人人の汐干かな 4点 辻村麻乃

【評】 空間の広がりがよく見えます。多分「人人人」がしゃがみこんでいるからでしょう。──仙田洋子


団欒に父ひとりゐる浮巣かな 2点 真矢ひろみ

【評】 この句の父は団欒の中に居ながらどこか寂しい。それは「浮巣」の働きに拠るのだろう。季題斡旋が田中裕明的でとても静かな句と思った。──依光陽子


マティスならどう描くかこの香水瓶 2点 仲寒蟬

【評】 だれの描く香水瓶が良いか。ゴッホ、ピカソ、マチィス、シーレ・・・ 3音の名前なら、やはり私もここではマティスを選びます。──渕上信子

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