投句〆切4/11 (月)
選句〆切4/21 (木)
(5点句以上)
9点句
昼の月よりも小さなさくらもち(松下カロ)
【選評】 空に浮かんでいる月とてのひらの桜餅なら、かえって月の方が小さく見えないだろうか、などと気になりました。捉えどころなく詠っているところに惹かれました。──前北かおる
【選評】 それをあての昼酒か。──中山奈々
8点句
均等にパン切る機械復活祭(渡部有紀子)
【選評】 分け与えてるにしても機械で均等に。不思議、おかしみ。──中山奈々
朧夜を歩く魚を踏まぬよう(望月士郎)
【選評】 朧夜には魚が道に出てくるらしい。それを踏まぬように歩く。魚も踏まれないように歩く。あれ、泳ぐのか。道は泳げたのか。あれ。あれ。と考えごとしていたら、踏んでしまう。踏まないことに集中しないといけない。そんな朧夜もあるのだ。──中山奈々
7点句
月おぼろ幻獣図鑑に「ヒト」の項(望月士郎)
【選評】 本当に掲載されていたのかどうかはともかくとして、ヒトもまた幻獣、というのは凄い。──仙田洋子
6点句
舟形の巨石を囲む山桜(妹尾健太郎)
何事も野球に喩へ永き日を(西村麒麟)
【選評】 不快感ではない軽くダルな気分が感じられ、面白い句でした。──青木百舌鳥
(選評若干)
ウラルアルタイほととぎす語とうぐひす語 3点 渕上信子
【選評】 ウラル・アルタイ語族、懐かしい響き。日本語もここに属するとか属さないとか。人間の言語ではそうなのだが、鳥語はどうなんだろうと作者は考える。うぐいす語とかほととぎす語とかあるのだろうか。ここに「ホトトギス」のあるところが俳句らしくて面白い。新興俳句語とかもありそう。──仲寒蟬
【選評】 (俳句作品一句として、ぴたりとポイントが定まっているすなわち名句だ、という印象ではない。しかし、題材の取り合わせが、意想外で、想像や比喩、風刺性豊かである。読んで考えていると楽しい。「ウラルアルタイ」地域の鳥たちが伸び暮びとてんでに鳴いていると、素直に取るならば、広大なアジアの花鳥諷詠の世界だろう。しかし、「ほととぎす語」は俳句界では、やはりくすぐりと挑発性がある。
かつ、ウラル地方の言語はウクライナ語圏への思惑に誘う。ロシア語圏との政治や文化との共存が、悲劇の破壊をもたらす根本的な問題が横たわる。
昨今のロシヤとウクライナの国家の争いは、多言語圏の民族の歴史に生じている深い亀裂からの原因もいくぶんある(だろう)。前半に重きを置けば一種の時事句。後半に、ついでの様に書かれている鳥語の世界、「ほととぎす」の勢力圏内でうぐいすの鳴き音は共存できるのかどうかということも、日本の文芸にあっても下らないような切実なようテーマではある。愉しみながら、俳句で政治論を演説をした感じになる、これって、なんと非俳句的な俳諧感覚なのだろう。──堀本吟
逢引の夜が絞り出す花吹雪 2点 篠崎央子
【選評】 「絞り出す」が凄い。──仙田洋子
お弁当に大卵焼き春の山 1点 真矢ひろみ
【選評】 お弁当の大卵焼きは、まさしく春の山のようでもあり。遠足でしょうか?楽しく懐かしい句です。──水岩瞳
三月十一日の酢酸臭う暗室 3点 中村猛虎
【選評】 酢の酸味の主成分であり、酒類の発酵によって生じる酢酸。その強烈な臭いが暗室に。三月十一日との配合により、次のイメージとしてモノクロの津波が浮かんだ。──山本敏倖
【選評】 写真を現像するための暗室には酢酸が匂うと聞いたことがあります。東日本大震災の状況を撮影するために沢山のカメラマンが現地へ向かい、写真を撮り、今も撮り続けています。日本を暗室とした震災、そして原発事故。暗室に籠もるたびに震災の記憶が蘇ってくるのでしょう。──篠崎央子
四千歩ほどの疲れや鳥雲に 4点 辻村麻乃
【選評】 今回なかなかいい句が多かったが、この句を選評には選んだ。「四千歩ほど」とはゆっくりとした散歩であると30分程度か。具体的に頭に浮かぶが、目には浮かばない。「三千歩ほど」でなぜいけないのかはわからないが、作者の実感だからしょうがない。子規の「鶏頭の十四五本」と同じ新式の写生。――筑紫磐井
ぱつと開くと同じ頁の春深し 4点 依光陽子
【選評】 詩集でしょうか。お気に入りの本の、殊にお気に入りのページですね。──渕上信子
蛇行する世界の果ての朧かな 2点 渕上信子
【選評】 朧の正しい詠み方なのではないかと思えた。自身が普段見慣れている写生句とは違うが、川の蛇行が正に世界の象徴でありその果てに朧がある。今の時期の感覚をうまく表現されていると思った。──辻村麻乃
花下の墓夜になりたる桜かな 1点 岸本尚毅
【選評】 上五よく情景を伝えているなと思う。巧みな一句。──依光正樹
春愁壁に自転車凭れたる 3点 辻村麻乃
【選評】 無声映画を見るような景。その場を離れた持ち主がスタンドを立てず壁に凭せかけたのだろうが、自転車自身が体をあずけているかのようだ。それもこれも立派な春愁の故に。──妹尾健太郎
ややこしき世であり春の鴨が二羽 3点 青木百舌鳥
【選評】 春の鴨が二羽いる。人間がややこしいなぁと感じるこの世界にあえて残りながら、淡々と飄飄と居て、なんだかたくましくて好ましい。作者も読者もそんな鴨たちにどこかほっとするのだ。俳諧味のある句。──依光陽子
白無垢の明るく春の百貨店 2点 筑紫磐井
【選評】 どんな華やかなワンピースよりも白無垢は存在感がある。六階、呉服売場。春はここまできちんと届いている。──中山奈々
桜の夜着られぬ服の積もりゆく 3点 飯田冬眞
【選評】 花屑の積もりゆくように。──仙田洋子
【選評】 散り積もる花の動きの印象を、服へと転用した着想。無理筋に陥らず妙味ありと感受します。〈着られぬ〉は機会に恵まれぬと云うのか、体型の話をしているのか、前者であって欲しい心地です。
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