【俳句新空間参加の皆様への告知】

【ピックアップ】

2021年10月15日金曜日

第17回皐月句会(9月)[速報]

投句〆切9/11 (土) 

選句〆切9/21 (火) 


(5点句以上)

8点句

その辺の秋草供へ虫の墓(渡部有紀子)

【評】 虫の墓に草花を供える作者の暖かい思いが伝わります。──松代忠博


遠からず人間になる鶏頭花(仲寒蟬)

【評】 芋虫を経て、か。そうだったかもしれない。──千寿関屋

【評】 〈遠からず人間になる〉の断定がよいですね。襞の多い〈鶏頭花〉を人間の脳に見立てた句はたまに見かけますが、ここまでの飛躍はなかなかのものです。マネーゲーム、戦争、疫病に一喜一憂する人類よりもよっぽど地球に優しい〈人間となる〉ことでしょう。【特選】です。──飯田冬眞


7点句

引き足を他界のままに踊り初む(真矢ひろみ)

【評】 この句の解説は難しい。踊りはじめの第一歩を引き上げて踏み出そうとするのか下がろうとするのか、軸足はあの世この世の、どちらに立っているのか?結局どちらともつかぬまま、片足は浮きながらまだあちらの域の中にある。その位置が気になっていただきました。盆踊りなどはあのふみだしたり、引いたりの足の捌きには、やっぱり何かの意味があるのらしい。感覚的に鑑賞すると、死生観のどこかに触れてくる。──堀本吟

【評】 まだ踊り慣れていないのだろう、ステップで引いた足の動きの中に、別の世界を引き摺ったまま踊り始めてしまった。心と体の一瞬のずれを捕らえた瞬間景。──山本敏倖

【評】 確かに、盆踊りの輪の中にはあの世の人もいる。──渕上信子


ことごとく闇の供物や流燈会(飯田冬眞)

【評】 「闇の供物」という把握が素晴らしいと思いました。──仙田洋子


6点句

虫時雨二階の浮かみゐたるかな(小沢麻結)

【評】 みんな大好き「二階」。これを、どう使えば活きるか、心得ている限りの先行句を踏まえつつ工夫の凝らし処ということになりますが、当句の表現。作者は二階に居て、布団にもぐり込んででもいるとして、自らの周囲の小空間だけが現世から切り離されたような、虫の夜の深い闇を闇と云わずに表現し得ていて妙味ありと思います。──平野山斗士

【評】 虫時雨で一旦切って、二階が浮かんで見えるように造られた現代建築を見ている、と解釈することも可能だが、二階が浮かんでしまうほどの虫時雨に取り巻かれている、と敢えて関連付けて一句を受け取った。いったいどれほどの虫時雨だろう。確かに物凄い蛙の声とか物凄い蝉時雨は経験したことがあるけれど、二階が浮いていると感じるほどの虫時雨、一度経験してみたい。──依光陽子


身といふ字舟に似てゐるさやけさよ(佐藤りえ)

【評】 なるほど~しなやかな把握ですね。──仙田洋子

【評】 言われてみればそうですね。一本の櫂で和舟を操っているように見えなくもない。──渕上信子

【評】 霧が流れて朝の明(さや)けさの中、川を行くたいして大きくはない乗り物が見え、一心同体にそれを操る姿も見える。──妹尾健太郎


切りたてのカンナは熱を持つてゐる(近江文代)

【評】 納得できる。鋭敏な感覚に惹かれました。──仙田洋子


5点句

草の市無能の人は何を売る(真矢ひろみ)

【評】 草の市で売られるものなど盆の関連のものに決まっている。それを敢えて問うたのは通常のものを扱うことのできない「無能の人」だからだ。つげ義春の漫画「無能の人」は確か河原で拾った石を売っていたっけな。──仲寒蟬


鶉二羽机の上と下を行き(西村麒麟)

【評】 こんな光景、ほんとにあるのだろううか?、見てきたような・・。見てみたい。──堀本吟

【評】 具象か隠喩か不明の「鶉」ですが、どちらにしても「机の上と下」という場面設定に奇妙なおかしみがあります。──望月士郎


アインシュタインの舌のひび割れ原爆忌(中村猛虎)

【評】 忘れてならぬ日の大本は印象的な写真に写る舌かもしれない。舌の根の乾かぬうちに同じ間違いを繰り返してはならないと告げるのも舌。──小沢麻結

【評】 史実に基づいた名句だと思います。──仙田洋子


雨音のしづかに絶えず秋彼岸(仙田洋子)


(選評若干)

二十世紀梨断面みづからの半生 2点 妹尾健太郎

【評】 〈二十世紀梨〉の断面をみて二十世紀に生まれたご自身の半生を振り返っていらっしゃるのですね。断面から滲み出る甘い汁。それを人は追憶と呼ぶのでしょう。──飯田冬眞


蓑虫をぶら下げてきし酒豪かな 4点 仙田洋子

【評】 酒瓶ではなくミノムシをぶらさげてくる姿──真矢ひろみ


いっせいに枕の燃える九月かな 3点 松下カロ

【評】 当然テロ(9.11)が念頭にあるのでしょう。見事な本歌取りです。かつての名句が、現代性を帯びて蘇りました。──仙田洋子

【評】 三橋敏雄の〈いつせいに柱の燃ゆる都かな〉へのリスペクトなのでしょうか? そうだとしても〈枕〉と〈九月〉の必然性が読み取れませんでした。特選ではありませんが、一筆啓上。──飯田冬眞


秋の蟬雨の間を少しづつ 2点 依光正樹

【評】 雨が降ると蝉が鳴き止み止むと又鳴き始めます。「雨の間に少しずつ」と的確な措辞が読者に伝わります。──松代忠博


係累の未だ解けぬ赤のまま 3点 松代忠博

【評】 未だ解けぬままの景…?──夏木久


独り居の父を枝豆慰めよ 1点 小林かんな

【評】 小川軽舟「掌をかざす 俳句日記」を思い出しました。──渕上信子


ストローの蛇腹で遊ぶ夢二の忌 3点 望月士郎

【評】 美人画で知られる夢二だが、児童雑誌の挿絵も描いていた。少女がストローの蛇腹で遊ぶ何気ない仕草も夢二であったら絵にしたであろうと想像が膨らむ。──篠崎央子

【評】 優男のなにげない仕草が見えてくるようです。──佐藤りえ


扶養控除申請南蛮煙管咲く 3点 篠崎央子

【評】 扶養家族ができたか、増えたのか、「南蛮煙管咲く」に幸せ感。──渕上信子


行列が出来るパン屋も秋のこゑ 3点 依光正樹

【評】 秋の声は決して秋の「ものおと」ではない。秋風、それに伴う葉の音、場所は廃墟や廃屋。作者のさびしい心の投影である。当世風な「行列のできるパン屋」にはないものである。それを強引にあるという作者の心の強さが俳諧である。──筑紫磐井


前世芋虫とはいへ空を知つてゐる 4点 佐藤りえ

【評】 前々々世は鶏頭花、今生は人間か。さて、来世はどこでなにをしてるやら。──千寿関屋


帽の子に秋潮深く澄めりけり 3点 岸本尚毅

【評】 目を惹いたのは「帽の子」だ。“秋潮深く澄んだ”のは飛躍的だが全体感でいただいた。──依光正樹


台風来るベッドを囲むカーテンも 3点 小林かんな

【評】 句のベッドは病院のものか。目で見てはいないが、さし迫った台風の気配がカーテンを震わせる。作者の身体もそれをけどっているのだろう。──青木百舌鳥


0 件のコメント:

コメントを投稿