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2021年1月8日金曜日

【連載通信】ほたる通信 Ⅲ(5)  ふけとしこ

 
   タオル
わたくしの塩分濃度冬紅葉
歳晩の畳めば膨れくるタオル
マルセイユよりの石鹸冬の虹
落柿舎の柿たわわなるまま師走
冬落暉竹がさやさや実を揺らし

   ・・・

  虹二重神も恋愛したまへり   津田清子
という句がある。
  虹の根を千年抱いてげいとなるか 大石悦子
という句もある。
 何かの講演を聞いた時、その講師の方が、「この中に虹に雌雄があることを知っている人はないでしょう」と宣った。「おやおや」と思ったが黙って聞いていた。虹が男性、霓が女性だということなど、誰も知らないだろうとは聞き手も見くびられたものだ。「ご存じの人もあるでしょうが」と何故言えないのだろうか…と思ったことだった。
 二重に架かった虹を見ると何かいいことでもありそうな気になる。何度か見たことがあるが、外側の虹は薄っすらと架かっていることが多くて、二つともくっきりと見えたのは今迄に一度しかない。セキトウオウリョクセイランシ(赤橙黄緑青藍紫)と子供の頃覚えさせられた虹の七色。外側の虹は色の並びが逆になる。副虹と通常は呼ばれるけれど、特に外側の虹を指して霓と呼ぶこともあるようだ。が、俳句で見かけたのはこの大石さんの句が初めてだった。このことに限らず、大石さんの俳句からは色々な言葉を教わることが多い。
 大阪住みの場合、冬の虹を見たくなれば時雨模様の日に湖西道路を北へ向いて走ればいい。私の場合専ら助手席の人であるから単純に喜んでいられるのだが、出ては消え、また現れる……、そんな虹と追いかけっこをしている気分になり、さらに落葉時雨が加わるということもある。
 その湖西の小さな田にくっきりと架かった低い虹は今も忘れられない。
  マフラーを投げればかかりさうな虹  としこ

(2020・12)

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