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2020年10月16日金曜日

【新連載・俳句の新展開】第5回皐月句会(9月)[速報]

投句〆切  9/14 (月)
選句〆切  9/28 (月)


【お知らせ!】第5回皐月句会(9月)を掲載します。しかしその後、夏雲システムが故障し、復旧はしましたが、第6回皐月句会(10月)は一応進めているものの、今後従前どおりの機能が発揮されるか不明です。第7回皐月句会(11月)をどうするかはこれから状況を見て検討させていただきます。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。

(5点句以上)
8点句
公転のかくもしづかに鉦叩(仙田洋子)

【評】 鉦叩の鳴き声は、時を刻んでいる。時計の秒針の音をチッチッチと表現するようになったのはいつからだろう。地球も星も規則的に公転しているが、音を発することはない。鉦叩が公転の速度を調節しているのかもしれない。 ──篠崎央子
【評】 宇宙的スケールとすぐそこの虫の闇との照応 ──望月士郎
【評】 公転と鉦叩の絶妙な取り合わせは、古池と飛び込む蛙、閑さと蝉の声という芭蕉の句の取り合わせを想起させます。地球は太陽の周りを回っていますが、回る音は勿論しませんし、回っている実感も私達にはありません。その静かさの中、鉦叩の「ちんちん」という鳴き声だけが聞こえてくるのです。またその鳴き声が公転の静かさを思わせるのです。 ──水岩瞳

7点句
竜淵に潜みし夜のショパンかな(渕上信子)

【評】 ショパン嫌いの高校教師のせいでショパン嫌いだったが、NHKのアニメ「ピアノの森」を見てから凛々しく切ないドラマを少し感じた。これはそう言うショパンか…? ──夏木久

名前なき家事を続けて秋が来て(依光正樹)
【評】  家事をする人を配偶者が見ている風景と見てみたい。「名前なき家事」とは、見ている人が関心を持っていないということか。飽きもせずよくやっていると言う感想があるはずだ。一歩進めば、配偶者そのものにももう感心がないようにも見える。いかにも秋らしい風景だ。 ──筑紫磐井
【評】 毎日繰り返される営み、その積み重ねが歴史となる。秋の次は冬、その次の春まで・・・ ──中村猛虎

5点句
五指をもて砥石を濡らす無月かな(篠崎央子)


左手は左へ伸ばす秋の風(依光陽子)
【評】 秋風を浴びながら大きくのびをしたのでしょう。その時ふと、作者は左手を左へ伸ばしていることを意識したようです。もちろん、右手は右へ伸ばしているのですが、ここでは左手だけをクローズアップしています。そう言われてみると、左手の方が秋を感じるのにふさわしく思われますし、もしかすると右手は春が似合うかもと思いました。当たり前の動作の中に発見があって面白かったです。

秋の蚊帳から海洋深層水ぬつと(仲寒蟬)
【評】  夏の蚊帳と海洋深層水でも十分新鮮。「ぬつと」も蚊帳離れしている。いろいろな意味で見過ごせない句。 ──小林かんな
【評】 ぬっとの把握が、海洋深層水に現前性を獲得。からの、起点となる場所を示す格助詞により、秋の蚊帳と海洋深層水のシュールな動画的仮想現実が浮かぶ。 ──山本敏倖
【評】 果たして、どのような読みがこの句を面白く、輝かせるのかと途方にくれたが、「ぬっと」出現する手触り感だけで充分と気づく ──真矢ひろみ
 

遠巻きに鬼が火を焚く女郎花(真矢ひろみ)

羊羹に爪楊枝地に曼殊沙華(仲寒蟬)

【評】 羊羹も曼珠沙華も私は大好きな「物」だ。好きなものを差し出されていただかないというのは失礼です。羊羹をおやつに味わっている屋内(縁側か)と、曼珠沙華がさく地上。二つの光景の併置、この取り合わせがかわっている。爪楊枝と曼珠沙華の細いシベが似ているし、羊羹の質感は、曼珠沙華の群れ咲く量感に通じるところもある、が、こういう無為rな結びつけ方は、かえって凡庸にまる。二つのオブジェの引き合いは、読むほうがかってに考えてください、と投げ出している。それも、面倒だから、両者をじっと見くらべている。やはり、花よりなんとやら。 ──堀本吟

篁の井戸深きまで星涼し(渡部有紀子)
【評】 深い心象風景と写実性が先人俳句を読みこんだ感性を感じる。 ──依光正樹

(選評若干)
革命に乗り遅れゐて穴惑ひ 1点 渡部有紀子

【評】 「革命」・・・メールのやりとりだけで会ったことはなかったけれど澤田一弥くんを思い浮かべました。 ──北川美美

石に露キリストのその腰の布 2点 岸本尚毅
【評】 不思議な句だ。キリストは確かに十字架にかけられる時、腰に布を巻いている。石に露があることとその腰布と、どう関係するのか。あまり理屈を付けない方がいいのかもしれない。作者は石の上の露が気になったように、ふとキリストの腰布が気になったのだ。 ──仲寒蟬

鶏頭を見る秋雨に打たれても 4点 依光正樹
【評】 事実が強いと思った句です。 ──小沢麻結

健康にならうばりばりオクラ食ふ 2点 仙田洋子
【評】 「健康にならう」という宣言、丸のままのオクラを食うという行為は相応しく、力強さ、骨太さが感じられた。傍目には健康そのものの人がさらなる健康を願い、また人々を健康に導くべく、オクラを齧る。 ──青木百舌鳥

露の世の露の如くに政 3点 西村麒麟
【評】 まったく何なんでしょうね、あの密室談合政治は。透明性にもアカウンタビリティーにも欠けた最低の組織ですよ、自民党は。露の如く消えてしまえばいいのに。でも、それじゃ、国としても困るし・・・というモヤモヤをよくぞ言い表して下さいました。 ──仙田洋子

芙蓉閉づこんなをはりもよいですね 2点 渕上信子
【評】 朝夕に終わる芙蓉の花は回旋する五弁が昼時には開ききり、あるものは色を白から桃色に変えつつまた次第に回旋状態に戻ってゆく。花弁はやがて辺りの空気を包み、夜には和菓子の小さな袋さながら道にばらまかれる。この句は終章の一歩手前、夕刻の様を肯定的に捉えたもの。桜や山吹の如くもなく、椿の如くでもない優しいおしまい。 ──妹尾健太郎
【評】 文語と口語を一緒に使うのは好きではありませんが、この句の切なさに惹かれていただきました。 ──仙田洋子

稲稔る太腿は跳ぶためにある 3点 篠崎央子
【評】 あ、そうか! 自分が跳べていない訳が判りました。蝗みたいに太腿鍛えなければ。 ──渕上信子
【評】 蝗と言わず“稲稔る”と切り込んだところが巧い。中七下五でたくましい後脚と跳躍する様までリアルに見える。勢いがあって元気がもらえる句。太腿、鍛えねば! と思いました。 ──依光陽子

抽斗へ今日の白紙をひがん花 2点 夏木久
【評】 ひがん花をひらがなにしたはからいが惜しいが、不思議感を覚えた。 ──依光正樹

襖絵の羽化を促す茶立虫 3点 山本敏倖
【評】 厭わしき虫もまた風流の一つ、茶立虫という呼び名自体が既にそうですが、もひとつ更に、風流な見立てを乗っけて来た。という句です。羽化とは何のことか? 蝶だか蟬だかの蛹が描いてあるとは思え……なくもありませんがそれよりも、雁とか鶴とか鶏とか、ごく定番的な鳥の姿が描いてあるのだと。一休さんの虎よろしく、画中の禽よ出で来たれ、そのことを羽化を促すと云った。茶立虫の立てる音から、幻想的な羽搏きの音に繋げたものと読みました。 ──平野山斗士
【評】 茶立虫が襖絵に止まりさつさつと音を立ている。恰も羽化を促してる。着想が素晴らしい句です。 ──松代忠博

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