【俳句新空間参加の皆様への告知】

【ピックアップ】

2014年7月11日金曜日

【小津夜景作品No.31】





梨のかたちの空をとぶ   小津夜景

第一楽章 まはりの声をよく聴いて
いきあたりばつたりに壁ぬけてをり
宙吊りのバナナを自我と名づけたり
くらげらの皿まつくらの気がしたり
あまりりす暴れてヴィオラあとずさり
古渡りのゼリーを恋ふる死角かな
白玉のころりと身代はりであるか


第二楽章 とてもみづみづしく
さつきからレム睡眠にかはほりが
パラフィンの舞ふたび梨のかたちせり
かたつむりすぎてもぬけのみづたまり
ゆふさりをあつめてさやうならやもり
ところてんまとふ眠りはけふかぎり
梅雨走りなみだぐもりのソナタかな


第三楽章 犬のやうにぶよぶよに
墓掘りのをどりとみゆるしたたりぬ
怪奇船グラジオラスを素通りす
ゆけむりの人らと少しかにばりぬ
枇杷いつからうすくらがりの尻なのか
陵墓みなリングと化すやむらまつり
瓜もみ果てこくりと首をくくりけり


第四楽章 ロマンスへもどる
竹夫人あめかんむりをはづしけり
いなびかり去りてしづかなそらがたり
ふいにないものねだりして不死男忌か
あつさりとみなおきざりよみなみかぜ
リヴィエラやさそりのやうなゆびきりや
虹ゆつくりしかばねかんむりをかぶる


アンコール 素を出して
万りよくを生かぢりしてしやつくりす






【作者略歴】
  • 小津夜景(おづ・やけい)

     1973生れ。無所属。





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