※画像をクリックすると大きくなります。
(デザイン/レイアウト:小津夜景)
I Have a Rendezvous with Peace 小津夜景
……戦争はあらゆる技術の基礎であると私の言ふとき、それは同時に人間のあらゆる高き徳と能力の基礎であることを意味しているのである。この意見は私にとりて頗る奇異であり、かつ頗る怖ろしいのであるが、しかしそれが全く否定し難き事実であることを私は知つた。簡単に言へば、すべての偉大な国民は、彼らの言の真理と思想の力とを戦争において学んだこと、戦争において涵養せられ平和によって浪費せられたこと、戦争によつて教へられ平和によつて欺かれたこと、戦争によつて訓練せられ平和によつて裏切られたこと、要するに戦争の中に生まれ平和の中に死んだのであることを、私は見いだしたのである。(ジョン・ラスキン『野の橄欖の王冠』)
猫の恋おんぼろアパートあとかたも
月日貝喰はれて無惨弔はな
風船に斃れし野など問うてをり
吾子にその光に蛆の生れやまず
陽よ占拠せよくろがねのぶらんこを
孵化寸前うづらに籠る微致死量
胎貝裂く目覚めのやうな酔ひがある
あげひばり悲劇はひとつの恍惚か
底なしの甘茶のとらへどころかな
墓場までいそぎんちやくを持つてゆく
付記1 今回の題 I Have a Rendezvous with Peace はアラン・シーガーI Have a Rendezvous with Death(僕は死に神と会ふ約束がある)のもぢり。この詩は大西巨人『神聖喜劇』第二巻で著者による邦訳が読める。
付記2 ラスキン『野にさく橄欖の冠』(御木本隆三訳、東京ラスキン協会)は絶版。今回の訳は新渡戸稲造『武士道』(矢内原忠雄訳、岩波文庫)内より微修正の上、拝借。
【作者略歴】
- 小津夜景(おづ・やけい)
1973生れ。無所属。
0 件のコメント:
コメントを投稿