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2014年3月14日金曜日

【俳句作品】 平成二十六年 春興帖 第二

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     小鳥遊 栄樹(「若太陽」「ふらここ」「立体交差」「里」「群青」)
春帽をかぶつて寡黙なる男
靴紐に雑草植うごと春散歩
春ショールふわり靴紐ほどけたる
皆同じ顔の絵画や春浅し
春の夜の指先に触る白熱灯
あんぱんをふつさりと割る春浅し
ドーナツを抜け出して春満月に

     杉山久子
ヒヤシンスポットからつぽ風光る
生前も死後も尖りて葦の角
一日のつひのひかりのはこべかな

     木村オサム(「玄鳥」)
己が背の見えてくるまで青き踏む
囀の上のコサックダンス隊
曖昧なほうの陽炎選びをり

     中西夕紀
駅降りて左右に大寺うすごほり
その墓の椿は蕾また来たし
金蘭や逢ひたき人に遭ひしごと

     ふけとしこ
暮遅し大きな靴が前に立ち
生前も死後も巣箱の傾ぎたる
につぽんに定型の詩クロッカス

     堀本 吟
4Bに替えてぼかして春の雪
卒業や木の股にまたがりし子も
啓蟄やメダル重たきハイティーン
志賀直哉旧居モダンや芽の馬酔木
ふれてはぽろりまたぽろりまたもものはな
人生の老いてもくぐる椿闇

     陽 美保子(「泉」同人)
     回想
胎の子に雪解雫の音あまた
胎動のかくも蛙の目借時
生まれくる四肢こそばゆし春あられ

     前北かおる
鳥翔る春野を一人い行くかな
はや水に洗はれてをり春の草
シャッターを切るたび増ゆる梅の花

     早瀬恵子(「豈」同人 )
詞梨勒(かりろく)の春の柱に夢ひと夜
乳白色のフジタの変身ハル少女
縛られし娘の足からさくら咲く

     内村恭子(「天為」同人)
春の夢黄金郷(エルドラド)まであと少し
春昼や店先に売る摩利支天
界面活性剤泡立ちの良き雨水



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