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2013年12月6日金曜日

【第二回攝津幸彦記念賞・佳作】 海市元町三‐一   望月士郎

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第二回攝津幸彦記念賞・佳作受賞作五十句

       海市元町三-一   望月士郎

春は曙コッカドウードウルドウー
地下鉄のここ満開の花の下
たんぽぽやバスはまだ来ないたんぽぽ
朧より大首ぬつと写楽の忌
通り抜けでき〼猫の恋あり〼
吾君や戯や和音阿吽猫の恋
鞦韆こぐ韃靼海峡見えぬかと
ふらここに喪服の人ややはり乗らず
肌色の人空色の空春うれひ
螢烏賊蛸唐草の皿にあり
母とゐた海市元町三ー一
見下ろせば見上ぐる我や桐の花
はつなつの無限の形の輪ゴムかな
白靴の中に人皮製の足
あぢさひに分け入りてより鰓呼吸
IQの伸びて縮んでかたつむり
夏の河若き一茶のひた走る
短夜や巻尺の端持つてくれ
掬われて金魚の暮す池袋
バスタブに睡蓮開く板橋区
滝落ちて身投げの粒子誘ひけり
甲虫ちひさき螺子を失へり
噴水を見上げてよりの変声期
青葉風少年の読む駱駝論
ゴキブリと対角線の夜にゐる
午睡する妻の長さのありにけり
顔二つありひまはりと非ひまはり
南北の東西東西夏芝居
螢袋満室ならば胡桃荘
星月夜数字見つめてエレベーター
階段をのぼりて月の踊り場へ
南国に死し十六の月明り
おおおいいううういいいい垂れてをり
秋思かなここに記しし十四文字
穴まどひ「んとす」でをはる広辞苑
鐘撞けば柿食ふ人と目が合ひぬ
身に入むや牛乳石鹸ひびわれて
羅馬とか柘榴の実とかそんなもの
冷まじやコーカソイドの鼻の穴
死角より綿虫あふれ出てこの世
とつくりのセーターにある西東
箸先に湯豆腐つかむ旅ごころ
点線を谷折りにして蝶凍る
目の凍てて月のぱりんと砕けむや
鶏肉に挟まれて葱嬉しいか
寒卵鎖骨の傍によき凹み
降誕祭30°に切る難しさ
ひとりゐて科白のごとき嚔かな
立ち食ひのうどんに載せる十二月
伝雪舟伝伝雪舟冬景色




【略歴】

  • 望月士郎(もちづき・しろう)

1951年 東京生まれ
2010年 俳句を始める
2013年 「海程」入会


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