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2013年9月6日金曜日

【俳句作品】 ほたる通信Ⅱ(増刊) 2013秋  / ふけとしこ

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ほたる通信 Ⅱ(増刊)2013 秋


          まだ宙に    ふけとしこ

玉虫を追うてゐし目のまだ宙に

訃の来たる梨剥くときの手暗がり

逝かるるか稲穂に色の出る頃を

露草のもう太陽に抗へぬ

草の花踏んで黒靴黒草履

奉納の鈴虫にしてよく鳴ける

  
     ・・・   ・・・   ・・・



「山繭に抜けしばかりの湿りあり  馬場移公子」中嶋鬼谷編著『峡に忍ぶ 秩父の女流俳人、馬場移公子』で知った句。つまり山繭の主は羽化して出て行ったということだ。「抜けしばかり」の措辞は養蚕の経験があればこそだろうか。養蚕は見聞のみで体験はない。でも解る。湿りを感じることもできる。ある時、乾ききって一部壊れた古い山繭を見つけた。同行の一人が欲しいというので渡したら「一寸法師の足拭きマットが出来ました!」とメールが来た。後日実物を見せられた。聞けば湯に浸して糸として引き出し、小さな織機(?)を作って織ってみたとのこと。脱帽! 出来ることは知っていたが、実行したことはなかった。本当に絹の手触り、艶があり美しい。……負けたな。ところで『峡に忍ぶ』には移公子の二冊の句集も収録されていて三八一頁に及ぶが、馬場移公子の全容を知ることができる。鬼谷氏渾身の一書である。



【作者略歴】

  • ふけとしこ

本名福家登志子。岡山県生れ。「カリヨン」を経て現在「船団」「椋」所属。句集『鎌の刃』『真鍮』『伝言』『インコに肩を』他に『ふけとしこ句集』『草あそび』等。1995年俳壇賞。
2000年4月より3年間個人誌「ほたる通信」を発行。2012年8月より「ほたる通信」凝縮版として「ほたる通信Ⅱ」を開始。



※画像では「ほたる通信 2」となっていますが、正しいタイトルは「ほたる通信Ⅱ」です。(編集部)


 

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