【俳句新空間参加の皆様への告知】

【ピックアップ】

2023年10月27日金曜日

第39回皐月句会(7月)[速報]

投句〆切7/11 (火) 

選句〆切7/21 (金) 


(5点句以上)

8点句

水母飼ふ男の部屋を出て夕焼(内村恭子)

【評】  この主体も飼われていたような書き方──小林かんな


店名に火蛾揉み合つてゐてしづか(佐藤りえ)

【評】 三鬼の〈まくなぎの阿鼻叫喚〉の逆を云ったような、〈しづか〉と云いつつも人の耳に聞えぬ蟲界の音を聴き取ろうとしている趣があります。また〈店〉を出したのは、客は来ず蛾は来るという哀感でしょうか。──平野山斗士

【評】 「店名」とは店名を書いたネオンなのだろう。火蛾がそこに群がるのだが「しづか」であるという発見。──仲寒蟬


虫干の山海経に何かの毛(仲寒蟬)

【評】 虫干の書にたまたまみつけた何かの毛。「何か」だからちょっと気味が悪い。いっそ鬼神か、鳥獣か、作業の手が止まる一瞬だ。──小沢麻結

【評】 座五にてなぜだか笑いがこみ上げてくる。中国最古の地書を虫干していたらヒトのではない毛が・・・それだけのことを書かれてこの可笑しさはいったい何なんだろう。──妹尾健太郎


いつぽんの線で鳴きけり牛蛙(依光陽子)

【評】 牛蛙の抑揚のない低い声を〈いつぽんの線〉と捉えたところに惹かれました。──篠崎央子


7点句

転生の途中夜店をかいま見る(望月士郎)

【評】 筆者も夜店が好きで、それは今生への転生の間に夜店を垣間見たせいなんだな、きっと。──仲寒


6点句

飛び魚の銀のいつまで空にある(小林かんな)

【評】 海から空へ飛ぶ、飛び魚の日に映えた銀色が見えた。一瞬の印象だが、その銀色が強烈過ぎて眼裏に残った。その残像が、いつまでも空にある感覚。──山本敏倖


鉄柵を隔て鬼百合向き合へり(平野山斗士)


5点句

ゆく夏や道の途中にある窪み(佐藤りえ)

【評】 「ゆく夏」が動かない。道は実際の道であり、人生の道でもあろう。──依光陽子


JAのよく曲がりたる夏野菜(内村恭子)


センセイと呼び合ふ扇子らが追悼(飯田冬眞)

【評】 特選がつけられるならこれが特選。医者もそうだが互いを先生と呼び合う異様な集団。先生と呼ばれる人にロクなのはいない。その連中が手に手に扇子を持ち、煽ぎながらセンセイ仲間を追悼している図。えらい皮肉。カリカチュア。「扇子ら」という表現が秀逸。──仲寒蟬

【評】 シニカルな風景である。お茶、お花、短歌とこういう世界は色々あるが、俳句こそぴったりだ。ちっとも追悼の気持ちが籠っていないのがいい。──筑紫磐井

炎昼の勾玉の目の昏さかな(田中葉月)


空といふ行き止まりあり立葵(篠崎央子)


真夜中は息細く吐く百合の花(小林かんな)

【評】 素直に解釈すれば息を吐く主体は作者なのだろうが百合の花のようにも思えてくる。真夜中に息を細く吐くその繊細さ。──仲寒蟬


(選評若干)

欲しいのは未だハリマオサングラス 2点 真矢ひろみ

【評】 ハリマオ!懐かしいー三橋美智也の歌う主題歌がコダマする?白人キリスト教国の意図するアジアの属国化を阻止するか、日本陸軍の野望の先兵か?どうでもいい…ここは未だ!私は未だ~せず、否定的用語を習ったが(漢語的に)、肯定的にも否定的のも使うらしい(検索で)ここは今でもだから肯定的だ、面白いが…。私は深夜でも外さない月光仮面のサングラスが欲しい!──夏木久


縁台に伏せし茶碗や青葡萄 1点 依光陽子

【評】 縁台、茶碗、青葡萄の3要素が不思議だ。──依光正樹


夕立の隅に追い詰められている 4点 中村猛虎

【評】 夕立でどこかの建物の下に避難したのだろう。それを追い詰められていると斜めに捉える感覚が秀逸。──辻村麻乃

【評】 「さつきから夕立の端にゐるらしき」と感覚としては似ているが追い詰められているという切迫感に実感がある。──仲寒蟬


淋代の浜の穂草の穂が黒し 4点 岸本尚毅

【評】 淋代海岸、太平洋無着陸横断飛行の飛行場として使用された場所なんですね。いい地名です、まっすぐな海岸線の、その穂草が夥しく見えてくるようです。──佐藤りえ


草間彌生の南瓜を沖へ海月かな 1点 真矢ひろみ 

【評】 昔、宇高連絡船で瀬戸内海を航る時に、守るように船に就いて漂う海月の群れに見とれることがあった。草間彌生のあのオブジェが台風で流されたと聞いたが、あの強烈な金色と黒の南瓜も、白い海月に守られて、ぷかりぷかり青い海を漂っているのだろうか?これこそ、地球の自然と人工の野菜が合い和して戯れる現代アートの粋と言わずしてなんであろう。くらげこそ海の南瓜か。雄大な句景である。──堀本吟


昼顔やオスの免許を返上す 1点 中村猛虎

【評】 かと言ってメスになれるわけではなし。寂しい・・・──渕上信子