●「五七五」3号・2019年8月
風友に参禅す
薔薇赤き赤き依身も照らす朝
地獄
風
苦なり病なり生死赤葉青葉添え
芍薬の一瞬救いの宇宙身体
ほんとうの生誕地行く東西南北
山高き丸橋来たらん明暗燈
下闇の白樫無限の白宝珠
万有の友の縁よと楠双樹
万象の色も信ならん沙羅双樹
その衣木喰卒寿や聴し色
五つ又行きつ帰りつ道祖神
直衆生
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●「ぶるうまりん」43号・2021年12月
友が居る
垂れ漏らす尿とて分身秋彼岸
言の葉を来るんだ香り金木犀
苦しかり白に溶け入るさるすべり
遁れ端の痛みは白き曼殊沙華
呼び起こす月日は揺れるコスモスよ
絶望に目覚める日毎秋深し
柿の実の色づく頃の悲しみよ
コスモスと幼き日々の坂の町
師安井浩司闘病中
日々帰らん 悲しみ滲む破芭蕉
歩く度痛み染み入る秋時雨
秋霖に濡れてつゆ草友の声
山茶花咲き始めて冬隣
僻んだ心傷み痛みて満月よ
赤染まるヌカキビ垂れし霧雨に
風起こりヌカキビ静かに揺れる朝
山鳩の山鳩在りし
心友よローズピンクの薔薇開花
南天の色づく先を友が来る
冷ゆる風広がる雲に空の青
幸せが満ちる赤い実秋麗
●「ぶるうまりん」46号(2023年6月)
友が居る(2)―最期の俳句
すずかけの無音ひとひら舞い降りし
病臥し友との別れ冬の旅
苦しみを共に歩くはシリウスよ
秋晴れやエンジェルラッパも応援し
電灯と火の見櫓の昭和かな
遠逝を生きて今此処大花野
橙黄色天空彩る樹木達
妬むなと微笑む冬の月光菩薩
弱き我妬み捨しと寒の夜
羨めば醜い貌鳥捨て往こう
赤垂れてチロリアンランプの冬うらら
揺れ木の葉音ひとつ無き隣人よ
開花一輪白山茶花に夕日雲
秋光と赤い帽子の少女かな
浄土門変化色づく南天の実
本棚に飾る小さきお正月
眠りの国へ赤い実たわわ届きたり
涙腺に細菌暴れ読めぬ文字
雲高き美し着物女絵葉書よ
空想のつもりに遊ぶ少女となり
寄り添うて散歩ふたりの冬日かな
流水の皮膚に染み入る冷たき夜
埋火や心貧しき女人とならん
安井浩司追悼二句
大寒や米代川へ哀悼を
寒中の雲霞なる野添の地
曇天や下萌え寒き小雨かな
雨音に伝わる優しさ冬曇り
冬雲に無限の青の青の空
石榴葉の降り下る黄色地に咲き
雪降れり金柑無数の円描き
原の海涙落ちつつ浄化せり
桃咲きていのち散りしも浄土門
雨音や響く靴音かなし花色
怖いと泣く子どもじぶんの子守唄
目覚めれば涙の夜明け君ともに
[本号をもって追加は終了となります]