●LOTUS16号(2010年4月)
日昇り日没す
日入る
草に触れ山々谷河足裏よ眼
秋空の天使と遊ぶ水子神
風音や堅胎帰還す木漏れ日に
気味悪き赤子や婆か葉で隠す
名付けし名悪魔は我が子座す仏陀
雷神の怒り注ぐ森悲しき雨音
鬼っ子や逃げ一目散にすすきが原
鬼っ子兄は追われ良われて骨直立
もうおっおっおた孤児の歌声谷上る
山呼ぶも岩塞ぐは蛇の道
夢や
全部耕衣要素分解笑い鯰
妻ひとり救えぬなんぞ野菊原
友の死や拾いつづける落椿
ゆらりゆらりはいとの足元花十字
祭は集い顔作りつつ異邦びと
反抗し犯行閃光夏季の海
我皆々嫌って死んだ「永山則夫」
病者嫌者並んだ肩と鐘の盲
泥に座す皮膚くずれる于握れと手
十六
彼の地の鬼とんぶりひとつ舌にのせ
太陽が染める砂塵や爆撃の村
貧しさも飢えに至らぬ虎落笛
山遠き労働の夕足裏あり
若勇者へ三句
瑠璃鳥来開く窓より白き花
春曙光越え行く峰に飛龍在り