【俳句新空間参加の皆様への告知】

【ピックアップ】

2022年6月17日金曜日

第25回皐月句会(5月)[速報]

投句〆切5/11 (水) 

選句〆切5/21 (土) 


(5点句以上)

8点句

箱庭の白沙微かな熱を持つ(渡部有紀子)

【評】 「微かな熱」がいい。──仙田洋子

【評】 箱庭の池のほとりにまいてある人工の白沙が熱を持つ、とは!?。夏の季語だから不思議はないのだが、考えてもみなかった。「縮み志向の日本人」(李御寧)で読んだときにも、日本人の静謐好みはあっても、「熱」については言及がなかったように思う。ともかく、自分の生きる場所は、ほんとうはこの箱庭ではないのだろうか?と不安になる。この「かすかな熱」とは、私から奪われてゆく体温のような・・。という存在の場所についての倒錯した感覚が表現されている。──堀本吟


先生に立ち向かひたる水着の子(西村麒麟)


ゆっくりと雨が壊してゆく浮巣(松下カロ)


7点句

和弥の忌こゑ無き金魚の唇うごく(渡部有紀子)

【評】 痛ましい・・・・・・──仙田洋子

【評】 澤田和弥の忌日は五月十三日。平成27年35歳で亡くなったから、今年は7周忌になる。生きていれば42歳、それでも若すぎる。夭折作家リストには入らないかもしれない(田中裕明のような根強いファンがいるわけではないから)が、何人かの人には忘れがたい印象を残している。寡黙となった和弥に金魚は語り掛ける。──筑紫磐井

【評】 声なく唇を動かしていることは金魚の常の状態なのだが、若くして逝った澤田和弥さんの忌日にそれを見るとき、どうしようもない無常観に襲われる。──依光陽子


たんぽぽのわた吹いている測量士(望月士郎)


6点句

人多く動き出したり芝桜(辻村麻乃)

【評】 この季語の、群がり咲く様相から齎される量感といったものを、人間に重ね合せてある処、上品な手際です。──平野山斗士


前髪の崩れて亀の鳴いている(中村猛虎)


5点句

一切の助動詞を消し五月晴(山本敏倖)


すこし毛が生えて赤銅色の蠅(岸本尚毅)

【評】 わかります。気持ち悪いものをついじっと見てしまう。──渕上信子

【評】 蠅という「キタナイ」と思われているものを、顕微鏡で観察するように、こんなていねいに描写するなんて!「蠅愛」を感じ、「虫愛」の強い私としては大いに共感。──仲寒蟬


(選評若干)

薫風を返す奥の間の障壁画 1点 仲寒蟬

【評】 奥の間に装飾性に富んだ豪華な作の障壁画。薫風を返すという現象が、その障壁画の画力、奥行き、芸術性を感覚させます。──山本敏倖


夏大根頷くだけの夫と食ぶ 2点 辻村麻乃

【評】 壮年初老とこの人は夏大根が好物だった。そして自身もちょっと辛口の人だった。でも今は違う、ただそれだけのことを詠んでいるようでいて空おそろしいところのある作品に思えた。──妹尾健太郎


暗黒のカーネーションを母に賜ふ 3点 筑紫磐井

【評】 母に「賜ふ」という表現から、厳しく緊張感のある母子関係であることが読み取れる。その母親に「暗黒」の(暗い赤色だろうが)カーネーションを選ぶところに、束縛され支配されてきた苦しみや感謝と共にほんの少しの恨みなど作者自身にも整理のつかない感情が渦巻いているのだろう。──辻村麻乃


逝く春やこの羽衣は燃えないゴミ 2点 真矢ひろみ

【評】 天女を天へ帰したくなくて処分しようとした羽衣が燃えないゴミであり、捨てる機会を逃してしまったような一句。女性の服は燃えないゴミに分別される場合が多いです。また、棺桶に入れる物も燃えないと入れられません。〈羽衣〉の発想が素敵です。──篠崎央子


春ゆうやけ原風景の犬ふりむく 1点 望月士郎

【評】 見えるような見えないような「原風景」だが、言葉の生み出した不思議な世界に惹かれた。──仙田洋子


青葉風天使の嘔吐つづきけり 2点 田中葉月

【評】 青葉風と天使の嘔吐。不協和音のようだが、惹かれる。それにしても、天使の嘔吐って何だろう。──仙田洋子


不正義でも平和がいいとつばくらめ 1点 水岩瞳

【評】 そうかも。「正義のための戦争」よりはましかも。──渕上信子


弁論部顔一杯に汗をかき 3点 西村麒麟

【評】 熱弁をふるう姿が見えてきました。青春を感じます。──前北かおる


桜餅買ひに出掛けて柏餅 3点 渕上信子

【評】 季語を大胆に二つ使って、ユーモラス。でも、こういうことって、ありますよね。──水岩瞳

【評】 そういうことがあるということ。──依光正樹


葉桜や小さき灯の保安室 2点 内村恭子

【評】 葉陰にひっそりと、安心のあかり。桜の名所のようでもあるし、大学の構内なんて絵も浮かびます。──佐藤りえ


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