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2022年1月28日金曜日

北川美美俳句全集9

 北川との出版に関するやり取りは、「『真神』考」に関するものがほとんどであったが、最初の手術の直前2017年9月のメールのやり取りでは俳句集についての言及がされている。

 「私の時代は、男女均等法の第一期くらいのバブリーな年代ですから、世の中、平等なんだと思っていましたが、そうじゃない、というのに気が付くまでさらに20年くらいかかっているように思います。

 平等だという教育の元に育ったので平等だと思っていましたが、世の中平等なんかじゃない、、というのが40になってからの実感です。それでもとても恵まれた人生でしたが…(まだ締めくくるには句集ださねば死ねないです!!)」

 やはり句集を出したいと思っていたようだ。少し不思議な続き具合であるのは、病気が女性特有のがんであるため、そんなことに思いをはせながら書いているせいもあるだろう。

 今回の「北川美美俳句全集」はそんな北川の創作活動の集成ための準備活動である。いずれ時期が来たらこれらを参考に句集としてまとめられたらいいと思っている。あるいはそれまでの間はこの全句集で北川を偲んでいただければと思っている。

 以下、「俳句新空間」に掲載された作品を順次紹介して行く。


●俳句新空間1号(平成26年2月)

   雪焼の男

小春日の窓辺に並ぶ句集いくつ

丘の上夕陽の差していて寒き

宿までの道二つあり雪上車

ひとりづつ投げて受け耿る蜜柑かな

死にそうに重たき蒲団白む空

初夢の後痒くなる耳ふたつ

ステンレス物干竿に射す初日

数の子をぽりぽりせんとや生れけん

襞に襞長峰影なす越が雪

雪道の轍にかかる陽の光

雪焼の男二十歳になりにけり

体育館四隅にたまる寒さがな

マンホIル残して雪の積もりけり

雪踏みのつもりで踏むや自動ドア

ボイラ1の音鳴り響く冬館

スト1ブの火を割箸で継ぎにけり

真つ暗な夜を雪眼で見ていたり

久女忌の匂い袋のほつれかな

寒き日やごロユキ御飯食べたりこと訊く

食べられる蒲公英を摘む息子かな


●俳句新空間2号(平成26年8月)

   十人の男

太陽が沈んじまった松の芯

おだやかな水をたたえて青水無月

近づきて離るる日月明易し

舟底より水面は高し半夏生

麦畑刈られ巨人が来る気配

するすると歴史の話風通し

山を背に山からの風薫りけり

待つと来ぬ電話を待てりさくらんぼ

真夜中に撫ぜて励ます冷蔵庫

弾力や網戸にあたる我が頭

十人の男穴掘る土用の日

夏草を踏みしめている乗用車

愛と誠と空気を含み岩清水

砂日傘波を見ている肩眩し

坐して汗立ちて汗かく坂の町

蔵の鍵涼しきことを秘密とす

片蔭の突然切れているところ

肩に乗る青葉一枚紫黄の忌

後ろより友の声するお花畑

銅鐸の太古の響き星月夜

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