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2021年9月17日金曜日

【中村猛虎第一句集『紅の挽歌』を読みたい】23 中村猛虎句集『紅の挽歌』 河内壮月(句会亜流里 同人)

"紅の挽歌”の選句を送ります。


少年のどこを切っても草いきれ

多動児の重心にある向日葵

この空の蒼さはどうだ原爆忌

開戦日父は螺子売るセールスマン

部屋中に僕の指紋のある寒さ

たましいを集めて春の深海魚

三月十一日に繋がっている黒電話

朧夜の一筆書きのカテーテル

すすきの穂ほらたましいが通った

ポケットに妻の骨あり春の虹


 猛虎氏は、およそ俳句に使われない“名詞”をいとも簡単に、五七五に紡ぐ。本選でも、多動児、 重心、螺子、指紋、たましい、深海魚、黒電話、カテーテルとオンパレードだ。

 いずれの句も意外性とか"よく、気が付くな”とか、感性の素晴らしさを賞賛するばかりだ。

すすきの穂ほらたましいが通った

はすすき、たましい、とくれば、風を足せば普通に一句となりそうだが、“ほら”と口語にすることで、何か爽やかな感がした。平凡に見えるが、広がりのある、不思議な詩情が有る。

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