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2021年7月23日金曜日

【中村猛虎第一句集『紅の挽歌』を読みたい】20 中村猛虎句集『紅の挽歌』 中野はつえ(青門同人)

いつもお引き立てをいただき、ありがとうございます。厚く御礼申上げます。

此の度の中村様の句集「紅の挽歌」一読させて頂き、島肌がたち、涙が止まりませんでした。

と申しますのも我が家の主人と一ヶ月ほどお早い旅立ちでいらっしゃいます著者の一句一句が我がことのように切なく辛いです。

私などは沢木欣一、細見綾子の両師より「即仏具象」とたたき込まれて四十年余経て来た者には、実に斬新で且つ繊細な感覚でとらえていらつしゃる。

その間を行き来しながら言葉を紡ぐ作者の視点は縦横無尽です。

俳句アトラス社 林誠司様がお書きのように天才でいらつしゃるのかも

目からうろこでございます。

何かしら「紅の挽歌」に酔うたような感じてございます。

自分でも何を書いたのやらお恥ずかしい事です。

何卒お許し下さいませ。また折角ご指名頂きましたのに、大変遅くなりました事深くお詫び申しあげます

どうぞコロナも第二波でございます、くれぐれもお身おいとい下さいましてご活躍のことお祈り申し上げます


中野はつえ 猛虎句集 紅の挽歌 選

白息を見続けている告知かな

余命だとおととい来やがれ新走

秋の虹なんと真白き診断書

厚岸の秋刀魚喰らいて昏睡す

寒紅を引きて整う死化粧

葬りし人の布団を今日も敷く

鏡台にウィッグ残る暮れの秋

亡き人の香水廃番となりぬ

初盆や万年筆の重くなる

手鏡を通り抜けたる螢の火

羅の中より乳房取り出しぬ

月天心胎児は逆さまに眠る

着膨れてオスの役目の終わりけり

冬日向死んだふりでもしてみるか


霜柱人は殺める言葉持つ

看護婦の囲みの真中桜餅

桜貝女の骨の柔らかき

鏡から出てこぬ妻よ啄木鳥よ

三合を過ぎて秋思の丸くなる

息吹けば息の形の葛湯かな

白木の祭壇崩せば残る冬座敷

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