投句〆切2/11 (木)
選句〆切2/21 (日)
(5点句以上)
9点句
食堂に口が並んでいて寒し(中村猛虎)
【評】 私語を控え、黙食が新マナーの食堂。食べる以外動かない口が距離をとって並んでいる寒さに共感します。 ──小沢麻結
【評】 ちょっと恐くてゾクッとした。でもこういう状況下だと「飲食すれば飛沫が飛ぶ」と意識せざるを得ず、すると口が強調され、結果口だけがクローズアップされる訳だ。しゃべらず、ひたすら物を取り込むだけの口・・・寒い! ──仲寒蟬
【評】 食堂に集まった人たちの口がクローズアップされ、それが並んでいる。食べ物を食べに行ったはずの口が、寒しの印象把握により、しゃべる口、泣く口、笑う口等々いろいろな表情が浮かび絵的。 ──山本敏倖
8点句
さよならのさ音さまようささめ雪(夏木久)
7点句
死の如くしづか雛段ととのへて(仙田洋子)
6点句
みみたぶは淋しき入江フリージア(松下カロ)
【評】「みみたぶと入江」。頭の中で海岸線をなぞってみると、湾曲が目に浮かび、なるほどと思う。フリージアが意外な取り合わせのようだが、これで新鮮な雰囲気が生じる。音、形‐視線、花の繊細な形状と香り、バラバラなようでで不思議なハーモニー。 ──堀本吟
5点句
漬け丼の醤の甘し島の春(内村恭子)
【評】 自宅に近いので、江の島かな?と思いました。 ──渡部有紀子
【評】 西国を旅すると醤油の甘さを実感します。「島の春」とゆったりと詠われていて、瀬戸内海か九州か、島を満喫している気分が出ています。 ──前北かおる
バーチャルの人のみに逢ふ余寒かな(真矢ひろみ)
(選評若干)
舟揺れて君は揺れずよ鳥帰る 2点 依光陽子
【評】 弔句のように思う。揺れない君との思い出を「鳥帰る」を背景にせつなくも正しく描き切った。 ──依光正樹
弁当は美味筑波嶺を遠霞 2点 千寿関屋
【評】 選 弁当という言い方が適度に俗。 ──岸本尚毅
二・二六事件こよなき暴と雪 1点 堀本吟
【評】 毎年此の日が来ると思い遣られる事件である。「こよなき暴と雪」とシンプルに表現されていることに尽きる措辞である。 ──松代忠博
春寒のふざけあひたる仲や何 2点 依光正樹
【評】 「何」と最後の唐突さ。本当に何なの! はっきりしてよ! と思いつつ、言わない。 ──中山奈々
節分のこれより鬼となるところ 2点 小沢麻結
【評】 鬼役を引き受けた人の感慨でしょう。一方で「結界の内と外」という言葉も浮かびました。 ──渡部有紀子
ナベサンに残るボトルや小正月 1点 西村麒麟
【評】 選 小正月が小さびしい。 ──岸本尚毅
瀬を渡る影あり斑雪野を真神 3点 妹尾健太郎
【評】 北川美美さんへの弔句と読んだ。瀬を渡る影、その視界には(あるいは一方では)斑雪野をゆく真神(狼)の姿がある。彼岸へ渡る己が影を見送った後、その魂は真神として此岸に残り、今、斑に雪の残った荒れ野を独り踏み出そうとしている。その孤高の姿は三橋敏雄のようでもあり、終に眞神と化した北川美美とも思える。
美美さんの眞神考の完成版を読みたかった。 ──依光陽子
【評】 昨年、生誕100年だった三橋敏雄の句「絶滅のかの狼を連れ歩く」を思いだしました。真神は狼。瀬を渡る影は三橋敏雄なのでしょうか。 ──水岩瞳
さてと言ひさてさてと言ひ戻り寒 3点 仲寒蟬
【評】 なんとなくユーモラス。 ──渡部有紀子
下萌にうすうすとある道をゆく 4点 青木百舌鳥
【評】 選 下萌により道が識別された。 ──岸本尚毅
【評】 まだ生え揃っていない、まだ踏み固められて固着していない、ほんのりとした道筋を行くところ、春の発見めいていて喜ばしいです ──佐藤りえ
ほっくりと焼けてきました冬木の芽 2点 田中葉月
【評】 選 ふと木の芽田楽を連想。 ──岸本尚毅
マスクしたまま唇はさよならバカ殿忌 3点 夏木久
【評】 厳粛ではない口ぶりで哀悼の意がひしひしと伝わってきた作品。かれこれ一年、目ほどにモノを言わないとは言え口唇がマスク越しでは読唇術も使えず不便な世の中が続いている。大切な人とのさよならさえもマスク越しで。 ──妹尾健太郎
【評】 選 志村の忌と解しました。 ──岸本尚毅
【評】 一度こういう俳句を作ってみたいと感じる・・バカ殿忌という新季語?に圧倒される ──真矢ひろみ
コルク嗅ぎ合ふよ暖炉の小さき春 1点 中山奈々
【評】 ヴィンテージワインが判っているような顔をして。見栄でも楽しい。 ──渕上信子
夜に言ふ山の深さや鬼やらひ 4点 西村麒麟
【評】 上五「夜に言ふ」に迫力が感じられました。鬼のいる世界。 ──青木百舌鳥
【評】 「夜の山の深さ」でなく「夜に言ふ山の深さ」とあり、話をしていると云っている。この場面、山が見えていても見えていなくってもどちらでも成立ちますが、〈言ふ〉と聴覚が出されたことで想像力が働いて、山が一層深く感じられるという修辞上の仕掛けがありますね。あたかも、炉辺で訥訥と語られる民話の趣です。異界から鬼がやって来る。季語が十全に活きて、単に古臭いのでない、古代の闇が匂うような一句と感受します。 ──平野山斗士
これがその亀鳴いてゐる証拠写真 3点 渕上信子
【評】 え?!そんなことあるの??と驚きましたが、本人は至って真面目に写真を差し出しているのでしょうね。 ──渡部有紀子
【評】 亀鳴くことそのものがフィクションであるが、音響を写真で示すと言う更なるナンセンスさ。「これが」が効いている。ぜひ見せてほしい。 ──筑紫磐井
うららかや地獄のぞきにポーズとり 1点 前北かおる
【評】 みんな地獄に落ちない自信があるので。 ──渕上信子
影法師冴えてながなが獣道 1点 平野山斗士
【評】 獣道を読んで巧みに季題「冴ゆる」が置かれた。 ──依光正樹
脇しめて水鳥もどる切手の中 3点 妹尾健太郎
【評】 飛び立った水鳥がまた戻ってきて着水する際に羽を畳んだのであろう。羽を畳む様子を「脇しめて」と表現したのも見事だが、さらに手に持っている封筒の切手の水鳥となったという感覚も驚きである。90円切手の水鳥だろうか。 ──篠崎央子
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