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2020年6月26日金曜日

【抜粋】〈俳句四季7月号〉俳壇観測210 現実社会を見るということ――小林貴子とコロナに触れながら  筑紫磐井

『黄金分割』の星野立子賞受賞
 小林貴子が『黄金分割』(朔出版)により星野立子賞を受賞した。小林は、宮坂静生主宰の「岳」の編集長を長くつとめており、現在は現代俳句協会の副会長でもある。現在までに『海市』『北斗七星』『紅娘』の三句集を著している。宮坂主宰はこの句集を「もののあはれ」を俳句で詠うと賞賛している。次のような句がそれに当たるであろうか。

若葉には若葉のもののあはれかな
葛引くと遠くが動く晴子の忌


 練達な女流作家として、私は現在の俳壇では俳人協会理事の片山由美子と双璧ではないかと思っている。そういえば、二人とも独特の季語論を展開し、多くの著作をものしている。且つ私の季語論をそうした中で容赦なく批判してくれている点でもよく似ている。自らの主張には厳しいのだ。
 さて俳句に関して言えば、小林の特色は、宮坂主宰の指摘にもかかわらず、アイロニカルな俳句、特に社会的な関心も強いことがあげられる。その意味では、片山にはまねのできない特色である。過去にも「松本サリン忌ざりがにの忌なりけり」「土の降る町を土の降る町を」のような驚く句を示してくれていた。今回の句集も、多くの評者はそのうまさを賞揚するが、俳壇では珍しいハードさに注目してもいいだろう。

地球の日珊瑚思ひのほか重し
桃見てフクシマ空見てフクシマ
二・二六の寒さを好きと宇多喜代子
夏ぐれや普天間飛行場遥拝
我も地衣類梅雨時は絶好調 


 かつて、協会や俳句総合誌が震災特集を組んだことはいかがなものかと小林に質問したところ、素直に同感してくれた。しかし、今回の句集でも小林に震災俳句はないわけではない。おそらく協会やジャーナリズムから離れて作者の良心として詠むことは是と考えているのであろう。
(以下略)

※詳しくは「俳句四季」7月号をお読み下さい。

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