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2018年3月23日金曜日

三橋敏雄『眞神』を誤読する 112. 戦歿の友のみ若し霜柱 / 北川美美



112)戦歿の友のみ若し霜柱

敏雄は戦没者を悼む句を多く詠んだ。戦争で命を落とすのは若者ばかりだ。帰還兵は戦没の友よりも歳を重ねていく。戦中派にしかわからない寂寞とした何かが漂う。

「霜柱」の「柱」が持つ国家、家、その他の集合体を支える意味に注目したい。何万もの民で国を支えた若き兵は、支柱としての地表を支える霜柱の形状と被っている。ザクザクと踏み潰される音が軍隊行進と重なり、脳裏に音が残る。戦没者、戦友の句と思われるものを引いておこう。

戦亡の友いまあがりくる夏の浜 『まぼろしの鱶』
年下の友死ぬ夏のはじめかな 『鷓鴣』
手をあげて此世の友は来たりけり 『巡礼』 
戦争戦災死者の蛍火と言ひつべし 『畳の上』 
當日集合全國戦没者之生霊 『しだらでん』

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