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2017年11月24日金曜日

【抜粋】〈「俳句四季」12月号〉俳壇観測179/戦争を思う ――虚子は戦争をどう見ていたか 団塊の世代は戦争をどう見るか  筑紫磐井



 一二月は七六回目の開戦記念日となる。これにちなんだ記事を紹介したい。
(中略)
●第二回姥捨俳句大賞
 毎年、信州さらしな・おばすて観月祭が千曲市で一ヶ月にわたり開かれる。そのメインイベントとして姥捨俳句大賞の公開選考会が開かれる。今年は九月一六日に第二回の大賞選考会が開かれた。昨年の第一回は杉山久子と久保純夫(67)の二人で争われ、杉山が大賞を獲得した。今年は、岡田耕治、折勝家鴨、倉田明彦、関悦史、中村安伸、山口昭男の六名が候補に上がり、結果的に岡田(香天代表。63)『日脚』と倉田(梟所属。70)『青羊歯』が争って倉田が選ばれた。著名な免疫学者多田富雄について研究者となり、現在は長崎市で医師を勤める。団塊の世代の作家だったということでしばらく話題になったようだ。
 いま、若い俳人を対象とした、田中裕明賞や北斗賞などの賞がふえてきているが、こと姥捨俳句大賞はその名にちなんだわけでもないだろうが、比較的高齢作家が候補になることが多い。定年後から俳句を始めて、その第一句集を出した作家たちにとって十分間に合う賞となっている。
 だから、その他の賞と比べて受賞作品は特徴的なものが多い。今回の倉田の受賞句集『青羊歯』では次の句に注目した。

   松代大本営
 地下壕に抽象の国梅雨の闇


松代は太平洋戦争で本土決戦の時に大本営を移す深い地下壕が用意されていた。そこに、国民不在の権力機構としての「抽象の国」が存在し、深い梅雨の闇が拡がっているというのだ。これこそ、若手ではなく、七〇代の年齢がなければ詠めない俳句であった。かつそれは現代の政治への投影も見える。
定年になって俳句を始めた世代――団塊以降の世代にとって、人生はまだ不満が残るものがある。とすれば、彼らにとって残る人生で詠むべきは「花鳥諷詠」ではなく、毎年劣化する社会に対する憤りの「社会性俳句」ではないか。そんな句集に注目していきたい(ちなみに、姥捨俳句大賞の選者は小澤實・筑紫磐井・仲寒蟬である)。

※詳しくは「俳句四季」11月号をご覧ください。

※「里」11月号「俳句雑誌管見 43回 生々しい観念ー倉田明彦ー」で堀下翔がこの句集を取り上げ、「地下壕」の句を丁寧に鑑賞している。また東京新聞、11月18日夕刊で佐藤文香も取り上げている。参照されたい。

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