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2014年3月28日金曜日

【芝不器男俳句新人賞】 対馬康子奨励賞受賞・俳句、この劇的なるもの / 髙坂明良

約一六年、俳壇とは無縁で俳句を書き続けてきた。ごく最初のころは、森須蘭氏の「祭演」を中心に宮崎斗士氏の「青山俳句工場」、金子兜太氏の「海程」など渡り歩き、武者修行の時代があった。それももう十数年前のことである。不思議と俳句熱はおさまらなかった。詩や短歌も俳句と同じ重量で創作していたのだが、どちらかのジャンルに疲れると、補うように別の詩型が書けたりした。韻文の世界は糊口を凌ぐこと不可能であり、スランプは何度かあったけど、書かない日はなかったと言ってよい。

大衆的な立場で言わせて頂くと、すべての新しい表現は古典をじゅうぶん咀嚼してこそ誕生の栄誉を得るものと思っている。芭蕉の「荒海や佐渡によこたふ天河」…そのような眼差しで世界を眺めていた。近代ともなると野見山朱鳥の「曼珠沙華散るや赤きに耐へかねて」に出遭い、生命諷詠の洗礼を受けた。そして寺山修司である。短歌は心象描写で、内から外へ放射する言葉多き火柱であるが、俳句は対象から離れつつフォーカスを当てる藝の極みであるから、いつも句作は崖際の戦いでしかたない。俳句は自己の内在律とモーラ(拍)との擦り合わせであり妥協なき結婚である。ゆえに、一句たりとも性格の不一致なるものは許されない。定型ならば二物衝撃を現代は信条とする傾向があるが、私は一行まるごとで異化する世界を堪能したいのだ。

このたび第四回芝不器男俳句新人賞・対馬康子奨励賞を受賞した。一〇〇句応募と、それだけで篩にかけられる中を集まった三四名の挑戦的な俳句を浴びながらの無記名・公開審査の会場は緊張の糸が最後までゆるがなかった。俳句では初めての受賞であり、今回を逃せば賞とは無縁なるものと諦めることに決めていただけにうれしい春の便りのようでもあった。わたしを選んで生まれてくれた俳句にまずは感謝を。そして俳句道に導いてくれた森須蘭さん宮崎斗士さん、その頃の句友、そして、やはり昔一緒に俳句の机を並べた曽根毅さんの大賞受賞を喜びたい。

そしてわたしは、自由律の系譜も継ぎたいと思う。今回、二八句の自由律を忍ばせた。ビート感、抒情、パッション、そういう所を評価してくださった対馬康子選考委員に感謝したい。俳句では疎外されがちなスタンスをわたしは歩んでいきたいのだ。






※下記は全て 「芝不器男俳句新人賞公式サイト」にリンクしています。

第四回選考結果 

芝不器男俳句新人賞:曽根毅  (作品No.33)
同奨励賞 
大石悦子奨励賞:西村麒麟 (作品No.42)
城戸朱里奨励賞:表健太郎 (作品No.36)
齋藤愼爾奨励賞:庄田宏文 (作品No.52)
対馬康子奨励賞:高坂明良 (作品No.72)
坪内稔典奨励賞:原田浩佑 (作品No.48)
同特別賞:稲田進一 (作品No.10)


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