【俳句新空間参加の皆様への告知】

【ピックアップ】

2014年2月14日金曜日

【小津夜景作品 No.12 】 固有名のある風景 小津夜景


※画像をクリックすると大きくなります。
(デザイン/レイアウト:小津夜景)









   固有名のある風景      小津夜景


  蓬餅を捏ねてゐたら、なんといふか。
黙しあひ揉みあひ春のもすらかな


  踏み入つたときの、あののぼせる感じがたまらなく良い。
春林のロールシャッハを放浪す


  西暦、と聞くと磔刑を連想してしまふ自分(でも時が楔なのは本当)。
ミモザふる千年人間(ミレナリアン)のなきがらへ


  どうみてもカンフー。なのにその人は「踊つてるだけ」とごまかすの。
九龍城(カオルン)はうららか死体役求む


  子供の頃に思つてゐたより、夜はずつと単純。
春の夜の地球(テラ)に三人の囲ひ妻


  本は読まない。いつも外遊びばかり。
荷風忌やなまくら趣味で天狗狂


  たつた今、夫に「俺、黒田硫黄と同じ誕生日だよ」と自慢された。
ポン・ヌフに凶徒かぎろふニューロンが


  京都を旅してゐて、虚無僧にタカられたことがある。
佐保姫を身ぐるみはぎし護摩ならむ


  つまり、ディスネス。
柳絮とぶひとつぶのこの歴史へと 


  名こそしらねどゆびきりをせむ。
カナンなりさて羊の毛でも刈るか




【略歴】
  • 小津夜景(おづ・やけい)

     1973生れ。無所属。


0 件のコメント:

コメントを投稿