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2013年8月2日金曜日

【俳句作品】平成二十五年 夏興帖 第三

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    小野裕三(「海程」「豆の木」所属)
次々と青々と来て茅の輪くぐる
大皿の底の静けさ夏祓
昇ったことのない階段乾いたヒトデ


   中西夕紀(「都市」主宰)
一輪車日傘の母と並びけり
裸足の子足裏明るく遠ざかる
晩生なる実梅がひとつ隠(こも)るのみ
枇杷を剥くことならできて末席に
鵜篝や前にうしろに影の山


   羽村 美和子(「豈」「WA」「連衆」同人。近著『堕天使の羽』)
ゲリラ豪雨隣の車線に飛び魚
蝸牛まだ抜けられない活断層
ほていそうポパイのパイプバグパイプ


   下坂速穂(「クンツァイト」「屋根」)
いちまいの青葉のやうに鳥の逝く
街といふはあるときしづか額の花
簾して路地裏に夜の残りゐる


   依光正樹(「クンツァイト」主宰、「屋根」会員)
涼しさや子どもなれども別の顔
水打つて音の返つて来たる庭
水遊びひとりが笑ひ初めけり


   依光陽子(「クンツァイト」「屋根」)
啞蝉やそこなる蝉にして遙か
蜥蜴の眼十字架は地に錆びながら
甚平や鑿をふるへば仏生れ


   池田瑠那(「澤」)
白南風や猫あゆみ去る煉瓦塀
西風の神【ゼフィロス】の膨れつ面や花いばら
樹液澄明羽蟻いつぴき溺れをり


   福田葉子
風鎭の翡翠の美し重信忌
遠雷は空の遠吠え重信忌
十薬の庭中に満ち老母住む
野の草に血止草てふ敗戰忌


   小早川忠義(「童子」会員・「あすてりずむ」)
画用紙に紫陽花描かれふやけあり
覆面のをんな伏し目に紅の花
見上げても君の顔なく沙羅の花


   三宅やよい「船団」
空豆の莢脱ぐごとく晴れわたる
扇子ひらけば「根性」と墨書あり
順接の団扇逆接の扇風機




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