2014年1月10日金曜日

【俳句作品】 平成二十六年歳旦帖 第一


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     池田澄子
皆様に賀正賀正と書き送りぬ
長生きを笑い嘆きに切山椒
大寒やたのしい我が家から出ない

     筑紫磐井
  歳末
シナトラが切なく甘くクリスマス
  歳旦
紅白の昭和してゐる行年来年(こぞことし)
新年に死ぬ人もあり星森々

     曾根 毅(「LOTUS」同人)
昼すぎの屠蘇をこぼしてしまいけり
初明り翼を持たぬ者として
行く先を問われておれり初詣

     網野月を(「水明」「面」「鳥羽谷」所属・「Haiquology」代表)
短日やto do listはみ出して
短日のせわしく動く匠の手
そのビルの影へ陽の入る短日の
高架下の造花のサクラ討入り日
初冠雪御山は見ても登っても
初夢や三打数四安打の男
むらさきは純日本製年酒酌む

     杉山久子(「藍生」)
煤逃の猫をかもうてをるばかり
石鹸に長き歯型や嫁が君
初電車盲導犬と隣り合ふ

     藤田踏青
クリオネと共に眠らん結氷期
凍てついたフロントガラス ドイツ観念論
冬の落丁か 動かぬ鴉

     福永法弘(「天為」同人、「石童庵」庵主、俳人協会理事)
初夢や世界遺産となる俳句
五七五より淑気てふもの
鹿島立つ馬は勢ひの嘶きに

     もてきまり(「らん」同人)
求不得苦(ぐふとくく)欲望かじる嫁が君
群青の筆圧泉下より賀状
ぽつぺん吹くをチューブ検索短ンと鳴く

     木村オサム(「玄鳥」)
杵先に一片の空餅をつく
年かはるアインシュタインの舌のごと
水牛の夢の反芻初明り

     ふけとしこ
年改まる赤き実に赤き艶
ひらひらと蛾よお降りのありさうな
冬三日月こをろこをろと海に島

     小早川忠義(「童子」会員・「あすてりずむ」)
面影にいたづら坊主せつきぞろ
来ぬ客や御用納めとお見受けし
肩肘張り午前零時の初商

     陽 美保子(「泉」同人)
人影に遮られたる十二月
蓋ものも蓋なきものもお正月
炉話の武井・樋口家ゆかりなし

     西村麒麟
見てゐても楽しきものにおでんかな
怠けるを貫きゐたり冬ごもり
働かず餅焼く事をしてゐたし
冬ごもりたまに句会の誘ひあり
人よりも鶉が多し冬ごもり

     内村恭子(「天為」同人)
太箸の白々ありし夜明けかな
太平洋まつすぐに行く大旦
元朝の羽根のばしたる鳥の群れ

     仙田洋子
煤逃といふ極楽をけふもまた
煤逃のいつそキリマンジャロまでも
しらとりの流れてゆくや年の暮
初明り死にたての死者手を挙げよ

     前北かおる(「夏潮」)
失すまじく赤子の心明の春
授くべき名のととのうて明の春
名にし負ふ果報こそあれ明の春

     岬 光世(「クンツァイト」・「翡翠」)
書初の始めの一字おほき過ぎ
追羽子や足袋の小鉤に皺寄せて
してみたき恋の札取る歌かるた

     月野ぽぽな(「海程」同人)
一角獣めくビルディング初茜
人日の人連れてゆくエレベーター
まだ恋を知らぬてのひら手毬つく

     水岩 瞳
案ずるや国の行く末去年今年
はつはるの網代方盆朱色かな
春着きて笑ふ歯脱けの少女われ






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